読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

忍びの国 和田竜著 新潮社 2008年

 織田信雄の伊賀攻めを描いた時代小説。
 ネタばれになってるかな、すみません;

 戦国時代。織田信長の次男・織田信雄伊勢国司 北畠具教に婿入りし、伊勢国を着々と乗っ取りにかかっていた。家臣を連れて具教を暗殺した信雄に、伊賀国下山甲斐の嫡男・下山平兵衛が進言に来る。我が国・伊賀を攻め滅ぼしてくれ、と。平兵衛は自分の弟を平気で殺すような父のありよう、それに代表される伊賀の人情風俗に心底絶望していた。偉大な父親への劣等感に苛まれるまま、何か手柄をと焦っていた信雄は、うかうかとその言葉に乗る。かくして、信雄の伊賀攻めが始まった。
 丸山城の再建、そこを拠点とする筈だったのに、完成した途端本丸は焼け落ちる。それは全て下山甲斐も含まれる伊賀の十二家評定衆の差し金だった。自分達の有能さ、特殊能力を他国に売りつけることで金銭を稼いでいた伊賀者たちは、織田軍に勝つことで自分達の評価を吊り上げようと画策していた。
 いざ、信雄の進軍が始まる。十二家評定衆の計算違いも多々あった。上の人間の思惑など知らない下人たちはさっさと故国から逃げようとしていたし、「弱い者苛めはしない」と伊賀攻めを避けていた勇将・日置大膳は、陰謀術策も含めた伊賀者の実力を認め、信雄軍に参加する。織田軍が伊賀者に勝つかと思われた瞬間、逃亡していた下人たちが帰って来た。愛国心からなどではない、忍びの一人・無門が「雑兵首一つにつき十文、兜首には十貫、信雄の首には五千貫」の値を付けたからである。無門は安芸国のさる侍大将から攫って来た娘・お国にぞっこんで、誇りに拘る彼女に嫌われたくないばかりから来た行動だった。
 かくして伊賀衆と織田軍の、伊賀国一の忍び・無門と大膳の闘いが始まる。…

 『のぼうの城』が面白かったので、読んでみました。ほぼ同時代の出来事ですよね。
 伊賀の忍者ってこんなのだったのかぁ。こりゃ嫌われるわ(笑)。
 はじめのうちは「赤勝て、白勝て」「どちらも負けるな」みたいな感じで読んでたのですが、何だか段々信雄寄りになりました。大膳の危機一髪に弓を引き絞る場面は映像で浮かびましたね、しかも大膳が咄嗟に振り向きもせず「腕で引くな、背で引け」と指導する。最後まで信雄の家臣であり続けた姿はやっぱりかっこいい。この辺りが伊賀者と対照的な所ですね。無門の、女房お国に頭が上がらない所もべた惚れだった所も魅力的ではあったんですが。
 伊賀自体は二年後、信長が直々に大軍を注ぎ込んで、人口が半分になる位まで「すり潰した」とか。この戦っぷりを見ていると、どうやって伊賀者を倒せたのかちょっと想像がつきません。結局ゲリラ戦は大軍を巧く使った用兵術には叶わないのかしら。その辺りもちょっと読んでみたいなぁと思いつつ。