読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

リフレイン 沢村凛著 新潮社 1992年

 沢村凛デビュー作。
 第3回日本ファンタジーノベル大賞最終候補作品。
 ネタばれしてるな、すみません;

 開発と殺戮の歴史が続いた宇宙時代500年の後、アンタミア歴4759年2月5日、アンタミア星域百六すべての国によって『恒久平和宣言』が採択された。『統合時代』の幕開けであるその日、定期路線宇宙船であるイフゲニア号の船上でも祝賀パーティが開かれていた。朗らかに和やかにパーティを楽しんでいた人々は、宇宙船の〈ジャンプ〉の失敗により銀河のとんでもない辺境の地に跳ばされてしまう。その上、船体に受けた致命的な傷により、宇宙のどこに位置しているかもわからない惑星に不時着する羽目に陥ってしまう。
 海の中への墜落により、多くの者がそこで命を落とした。231人が生き残って、着のみ着のまま何とか陸地へ辿り着いた。大気成分は人類にとって生息可能だったものの、何が害になるか分からない中、231人は全員が生きて母星に帰ることを決意。「イフゲニア」国の住人として協力して暮らし始める。中心になったのは国際弁護士ラビル・アンフォード。人格者で常に温厚、冷静な彼の言動は皆の称賛を集めたものの、一部の人々からは露骨に嫌がられていく。職業軍人ミラドスもその一人だった。やがて彼を中心として、6人の男が「イフゲニア」国を出て行く。
 出て行った彼らは鬼子となった。夜の間にせっかく開墾した畑を荒らし、食糧を奪うようになる。段々寒くなって行く中、冬を控えてどれだけ蓄えたらいいのかも分からない状況、さらに乱暴された女性が出て、イフゲニアの人々の怒りは頂点に達する。国民全体が参加した裁判で、ミラドスを極刑にする裁決を下す。それにただ一人反対したのは、ミラドスに瀕死の重傷を負わされたラビルだった。
 ミラドスの罪は極刑を受けるほどのものではない、と弁護するラビル。だが国民はそれを押切る。ミラドスはミラドスで、刑を執行するならラビルの手でと希望し、ラビルは結局それを了承する。
 イフゲニアの人々が救出されたのは一年半後だった。ラビルはイフゲニアに残ることを望む。固い決意にしぶしぶ従う人々。だがラビルの母星メリエラは、彼を諦めはしなかった。初めはラビルがイフゲニアで殺されたのではないかと疑って捜査していたのだが、遂に真実に辿り着く。メリエラ星では、殺人はどんな理由があっても許されることではなかった。
 メリエラに連れ戻され、ミラドス殺害の裁判を受けることになったラビル。銀河を巻き込んだ長い戦争の歴史の中で、ずっと非暴力・無抵抗を貫いてきたメリエラの文化は独特なものだった。ラビルのしたことは罪ではない、とイフゲニアの仲間が立ちあがる。ジャーナリストはマスコミを煽り、国際弁護士も乗り込んでくる。他の星の政治家まで圧力をかけるが、メリエラ星の意志は揺るがない。誰より何より、ラビル本人が、罰を受けたがっていた。…

 再読。
 ちょっと前、何を読んでも今いち乗り切れない、と言う状態が続きました。暑くなって体調があまりよくない、ってのもあったと思うのですが、とにかく間違いなく面白い物が読みたい、と思いました。…それでもこの作品を選ぶのは少し勇気が要ったのですが。17年読み返してなかったんだよなぁ。初読の印象がとにかく強すぎて、読み返すのが怖かったと言いましょうか(苦笑;)。
 やっぱり面白かったです。大筋は覚えていたものの、細かいことは多々忘れていました。イフゲニアでのサバイバル生活がもっと長かった気がしてたけど、メインは帰って来てからの裁判と、仲間の東奔西走だったのね~。以前は触れてはいけないもののように思えたメリエラの倫理感も、ただ持ち上げるのではなく、欠点も描いている。そんなに怖れるほどではなかったかも。
 ただ、以前は見えなかったアラと言うか違和感と言うか、突っ込み所も見えました。ご都合主義的な所ありますね~。何の改良もせず人類がそのまま暮らせるような星に落ちる幸運、またそんな楽園なら、いかに辺境の地にあろうとイフゲニアは開拓されたと思うし。強姦された女性の描かれ方とかあっさりしてる気がしたし、何より、一応被害者であるミラドスやその遺族の声がどこからも聞こえてこない。何しろ理不尽な、猟奇的な快楽殺人が今ほど話題になってなかった頃に書かれたものだからなぁ。今、沢村さんはこの話を書けただろうか。
 個人的なことですが、自分のあの頃の記憶力にも感心しました、我ながら(笑)。今読んだら、カタカナの名前に馴染むまでまぁ時間がかかったこと(苦笑;)。人の名前なのか星の名前なのか宇宙船の名前なのか、人ならば男か女かも区別がつかない。これを読みこなしてたんだよなぁ、私。若さってすごいぜ(苦笑;)。