読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

アメリカ第二次南北戦争 佐藤賢一著 光文社 2006年

 中世ヨーロッパを中心に描いてきた歴史小説家・佐藤賢一アメリカ近未来史。

 2013年、アメリカ初の女性大統領ケイト・マクギルがテキサス州ダラスで暗殺された。代わってその座に就いた黒人副大統領ムーアはマクギル殺害の犯人逮捕に全力を傾け、同時に銃規制法をぶちあげる。反発する南部州。とうとう南部連合が独立を宣言、それを認めない北部合衆国側と戦争になる。それは第二次南北戦争と呼ばれた。この超軍事大国の内乱に口出しできるものはおらず、口出しされていた中東国は平和理に事を収め、軍需産業の拡大からアメリカ以外の全ての国が潤う有様。今、2016年は一応休戦の様子を見せていた。
 日本のジャーナリスト森山悟はこの内乱の現状をリポートするため、ロスアンゼルスに飛んだ。合衆国側の日本人義勇兵や女性兵士に取材し、情報を収集する悟。そこで知り合った結城健人、ヴェロニカの二人と共に今度は連合国側へ向かう。外国人に対する丁寧な対応、テキサス州副知事にまでインタビューできるが、その秘書マーガレット・スペンサーから大統領暗殺の真犯人を見付けて欲しいと依頼される。犯人が逃走に使ったバイクから、ニューオーリンズまで来た一行。だがそこで出会ったフランス人ファビアン・リシュラに一杯食わされ、有色人の暴動、曳いては再発する南北戦争に巻き込まれる。
 人種差別、選民意識、アメリカの暗部が浮かび上がり、南北戦争の真の理由が明らかになる。…

 今回は歴史小説じゃなくて近未来史だったのね~。
 …時間かかりました。返却期限までに読めないかと思ったよ; 登場人物が皆さんアクが強くて、「アメリカ人にカシコはおらんのかいッ!」「ヒトの話ちゃんと聞こうや;」(注:関西弁でお願いします)とめげそうになるのをとにかく読み続けました。何しろ話は面白いので。
 近著で少しはマシになってた、女性に対する陵辱シーン復活。…表現が多少ソフトになってる気もしないではないけれど、これ読むの結構辛いんだよな; 悟に色目使うヴェロニカにしろ、こう言う状況では女はこう言う目にあうんだよな、ってイヤ~な気分になってしまう。
 圧巻はラスト100ページで訪れました。…そうか、これが真相か…! この作品、ある意味ミステリなのかもしれません。
 ファビアンのアメリカ評「あちらこちら出しゃばられて、なべて他の国々は迷惑しているのです。そのくせ本人は役に立っているつもりなのだから、もうつける薬というものがない。そのうえ協調性に欠けていて、ごく常識的な国際社会のルールにも従えない。そのくせ自分の意見を退けられた日には、アメリカだけでもやると、いきなり臍を曲げてしまう始末なのです。まるで、子供だ。なのに図体だけは大きい」。…う――わ――。福井晴敏氏が『Twelve Y.O.』で日本を12歳の子供に例えてたのを思い出しました。
 もしこれからこの作品を読む人がいたら、エールを送るぞ。頑張れ、ラスト100ページに辿り着くまで! カタルシスはそこにあるから!(笑)