読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

死神の精度 伊坂幸太郎著 文藝春秋社 2005年

 死神が語る連作短編集。第57回日本推理作家協会賞短編部門受賞作品。

『死神の精度』:「私」こと死神は、死ぬと予定された人物を七日間調査し、その判断が可か不可か見極めるのが仕事。今回私に任されたのは、メーカーの苦情処理係の女性。日常ぼそぼそと話す彼女は、妙な苦情主に目をつけられていた。名指しで彼女を指名し、文句を言ってくる。そのうち、彼女に会いたいと言ってきた。…
 …これ、途中でオチが分かっちゃったなぁ。でも読後感のいい作品でした。

『死神と藤田』:今度の私の担当は藤田と言うやくざの男。今時に珍しく、任侠の世界に生きている。その分上役からも煩わしく扱われ、切り捨てられようとしていた。藤田に心酔する舎弟の阿久津は、一人で敵地に乗り込もうとしている藤田を何とか助けたいが、その足掻きが裏目に出る。

『吹雪に死神』:今度の担当は田中聡江と言う婦人。山奥の山荘に夫と宿泊中。夫を始め、宿泊客が次々と吹雪に閉ざされた洋館で死んでいく。一人目はワインでの毒殺、二人目は刃物で背中を刺され、三人目も包丁で。死神は誰が犯人か推理する。…
 …「わーい、雪密室雪密室♪」と喜んだのも束の間。これは結構反則技だなぁ(笑)。

『恋愛で死神』:今度の担当は服飾店員の荻原。彼は向かいのマンションに住む女性・古川朝美に片想いしている。最初、荻原を自分にかかって来ているいたずら電話の主と勘違いして警戒していた朝美。誤解も解け、二人の仲が接近していった矢先、荻原は彼女の部屋に侵入する男を目撃する。…
 …私、眼鏡好きだけどな~(笑)。音楽や映画で同じような感想を持つ、それを言い合える。それは確かに幸せですね。よしながふみの『愛すべき娘たち』にも似たようなシーンあったっけ。どちらも切ない結末。

『旅路を死神』:母親を刺し、行きずりの若者を殺した男・森岡が今回の担当。死神の車に乗り込み、奥入瀬へ行け、と命令する。森岡には幼い頃、四人組の男に誘拐・監禁された過去があった。奥入瀬には、何故か今も母親と連絡をとっていた犯人の一人・深津が勤めている筈だった。過去を確認するため、森岡と死神は十和田湖へ向かう。

『死神対老女』:海の見える高台で、美容院を経営する老女が今回の担当。昔から身近な人を亡くすことの多かった老女は死神の正体を見抜き、彼に明後日、十代後半の少年少女を客として何人かつれてこい、と言う。その目的は何か。…
 …なるほど、老女の名前が出てこない訳だ。こういうラストになるとは思いませんでした、「死神」を逆手にとったのね~。

 何年も仕事している割には世間擦れしない死神さん。あの天然っぷりは『スタートレック ネクストジェネレーション』のデータさんを思い出しました。日本語って難しいねぇ(笑)。
 短い話ばかりなのに何故か時間がかかりました。後半は早かったんですが、どうも私にはこの人の文章、慣れるのに少し時間が要るようです。