読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

御伽草子集 完訳 日本の古典 第四十九巻 小学館 1983年

 文正草子
 真面目に勤めていたのに大宮司殿にクビにされた文太。塩焼きをして働くうち大金持ちになったが、子が産まれない。鹿島大明神に参拝して願をかけ、美しい女の子二人を授かった。だが、この二人はどの縁談にも首を縦に振らない。噂ばかりが先に立ち、ついに都の中将殿の元に届いた。評判だけで恋をしてしまった中将殿は、物売りに変装して姫君に会い、思いを伝える。中将は姉を娶り、妹は中将から話を聞いた帝に望まれ、中宮になって皇子を生んだ。

 鉢かづき
 十三歳で姫君は母親を喪った。母親は死ぬ前に、重そうな手箱を姫の髪に載せ、さらに鉢を被せた。数年後、父親は新たな妻を迎えたが、この継母は鉢かづきを気味悪がり、彼女を野に捨ててしまう。自殺も考えた鉢かづきだったが鉢のためにそれもままならず、やがて国司の家に拾われて湯殿番として雇われる。そこで、その立ち居振る舞いからその家の三男の宰相に見初められるが、周囲の反対にあい、長男次男の嫁と比べられることになる。その寸前、鉢が割れ、中から金銀財宝が現れる。

 御曹子島渡
 御曹子義経藤原秀衡の助言を受けて、大日の法という兵法を得るために、馬人島・裸島・女護の島・小さ子島・蝦夷が島など、多くの不思議な島を経て、とうとう千島の都に辿り着く。得意の笛で大王との目通りは叶ったが、大王の持つ兵法の書の、肝心の部分は見せて貰えない。御曹子は大王の娘の天女と恋仲になり、無理を言って見せて貰うが、書き写す傍から兵法の書は消えてしまった。天女は御曹子を逃がし、自分は大王に殺されてしまう。

 猿源氏草子
 猿源氏という鰯売りが、蛍火という遊女を見初めた。猿源氏は舅の南阿弥陀仏のアドバイスに従って、関東武士の宇都宮弾正の振りをして蛍火に近づく。寝言やら何やらで何度か正体がばれそうになるが、教養で切り抜けていく。

 ものくさ太郎
 国でも並ぶもののない無精者 ものくさ太郎。家から転がり出た餅さえ追いかけず、通りかかった者に拾って貰おうとするほど。だが嫁取りをエサに夫役で京に上がらせると、まめまめしく働いた。帰郷の際、妻を紹介して貰えなかったものくさ太郎は、辻取で美しい女房を見初める。そのまま女房にまとわりつき、彼女の家まで押しかける。

 梵天
 淳和天皇の御代、右大臣高藤が神仏に願って、一粒種の若君 玉若を授かった。十三の年、両親を亡くした玉若が供養に笛を吹いていると、梵天王がその音を聞いて感心し、姫を玉若の妻として向かわせる。その話を聞いた天皇梵天王の姫君が欲しくなり、玉若に様々な無理難題を申し付けるが、玉若は姫君の手助けで切り抜ける。だが玉若が梵天国に行った折、はくもん王と呼ばれる捕らわれ人を逃がしてしまう。はくもん王はかねてから姫を妃と狙っていたので、彼女を攫って羅刹国まで連れて行ってしまった。玉若は千日かけて羅刹国へ辿り着き、笛ではくもん王の傍に上がり、姫君を連れて逃げる。

 和泉式部
 和泉式部という遊女が、橘保昌という男の子供を産んだが、五条の橋に捨ててしまう。男子は長じて阿闍梨となり道命と名乗ったが、ある日和泉式部を見初めてしまう。道命が持っていた守り刀から、和泉式部は道命が自分の子だと知り、書写山にのぼって性空上人の弟子となる。

 一寸法師
 摂津国の難波の里の翁と媼が、住吉大明神に参拝し、子供を授かる。だがこの子供が一寸以上大きくならない。疎ましく思っていると、それを察した一寸法師は針の刀を腰に、椀を舟として出て行き、鳥羽の港に辿り着く。仕えた三条の宰相殿の姫君を好もしく思い、策略を巡らせて姫君を無実の罪に陥れ、屋敷を追い出されるよう仕向ける。姫と行動を共にする一寸法師。鬼の島に辿り着き、出くわした鬼二匹を退治、打ち捨てて行った打ち出の小槌などの宝物を手に入れて身長やご馳走、金銀財宝を打ち出して幸せに暮らした。

 浦島太郎
 丹後国に浦島太郎という漁師がいた。釣った亀を逃がしてやった翌日、浦島太郎は小舟に乗った美女に出会う。乗っていた船が遭難した、どうか本国に送ってくれ、という美女を可哀想に思い、浦島太郎は言われるまま沖に漕ぎ出す。竜宮城に着いた二人は夫婦となり三年を過ごすが、やがて浦島太郎は故郷の両親が心配になり、一旦里帰りしたいと申し出る。女人は自分の正体は亀であると明かし、決して開けてはならない玉手箱を形見として渡す。故郷に帰った浦島太郎は、そこがもう七百年も経っていたことを知る。玉手箱の中には浦島太郎の年齢が畳み入れてあり、それを開けた太郎は年老いて鶴の姿に化身する。

 酒呑童子
 丹波国大江山に鬼神が棲んでいて、若い女人を攫って行く。姫君を取られた中納言くにたかは帝に次第を訴え、帝は源頼光をはじめとする六名に鬼退位を命じる。山伏に身をやつした六名は、やはり妻子を鬼にさらわれた協力者から毒酒を貰い、道案内をしてもらって岩屋に辿り着く。鬼神からもてなされた頼光たちはさらわれてきた女たちの血の杯、人の肉をさらりと受けつつ毒酒を勧め、酔っぱらって寝込んだ鬼神の手足を鎖に繋いで討ち取り、生き残っていた姫たちを救う。…

 童話、民話、神話の類は好きです。
 日本のいわゆる昔話をしっかり読んだことなかったなぁ、と借りて来ました。…しまった、完訳ではなく意訳の本にすればよかった;
 読み辛いよぉ、と思いながらこつこつ読み進みました。お話自体はどれも短くて、で、色々意外でした。…乙姫様って元々助けられた(←これも正確には疑問)亀だったのか…!
 昔話に今更ですが、女性の意思はほぼないがしろ(笑)。見知らぬ男に追い回されるとか覚えのない罪で追い出されるとか、今の目線で見るとぞっとしてしまう(苦笑;)。高校の古文の先生が「一寸法師って本当はずるい性格してるのよ」と仰ってたことは記憶してましたが、一寸法師自身が両親にも鬱陶しがられてたとは知らなかった。
 ギリシャ神話のアルゴー船のような、ガリバー旅行記のような話あり、中国の故事のような話あり。あっちこっちから伝わってると考えるべきか、どの民族も一定のパターンのお話を生むもんなんだ、と考えるべきか。酒吞童子を退治する六人衆にはそれぞれイメージカラーがあるのね~、戦隊ヒーローもののルーツを見たよう(笑)。
 とにかく源義経は好かれていたようだし、教養も大切だったようだし、でも結局血筋が一番物を言うような気もしないでもない。皇族のご落胤はあちこちにいたようでした。