読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ペッパーズ・ゴースト 伊坂幸太郎著 朝日新聞出版 2021年

 作家生活20周年超の集大成となる、一大エンタテインメント長編! (帯文より)

 檀千郷は中学校の国語教師。飛沫感染により、相手の未来が一瞬だけ見える不思議な能力を父親から受け継いだ。ある日、生徒の里見大地が新幹線事故に巻き込まれる未来を予知したことから、大地の父親 里見八賢に、テロリストではないかを疑われてしまう。何とか誤解は解いたものの、今度は八賢が関わる とあるサークルの犯罪計画に巻き込まれ、監禁されてしまった。そのサークルは、カフェ・ダイヤモンド事件と称される爆弾テロ事件の被害者遺族の集まりであり、その時の警察の対応にも、犯人をする発言をしたとされるTV司会者 マイク育馬にも憤りを感じていた。
 とある医院で人質を取って立てこもるメンバーと、マイク育馬を追って野球場へ走るメンバー。そのうちの一人 野口は、かつてネコの虐待をSNSで煽っていたとかで、同じ目にあわせるのだと息巻くネコジゴハンター ロシアンブルとアメショーも彼を追う。
 生徒の書いた小説の登場人物だった筈のロシアンブルとアメショーと共に、檀も野球場へ向かう。彼の目には、天童選手の新記録ホームランとパニックに陥る観客の姿が〈先行上映〉されていた。…


 面白かったです。まさしく伊坂さんの作品。テンポのいい展開、回収される伏線、はらはらどきどき、するすると読めました。
 檀先生の前にロシアンブルとアメショーが出てきた時には、どういう世界線の話!?とちょっと混乱しました。一応説明ついてましたねぇ。…とすると、小説部分はどこまで本当か疑うべきなんでしょうけど、その検証は面倒臭くてしませんでした。(←おい;)
 ロシアンとアメショーの軽妙で緊張感のないやりとり、暴力沙汰まで軽く描かれる。そこがかえって不穏さや不気味さ、恐怖感も醸し出す。悪い人ではないんだけど、頭のネジぶっ飛んでるよなぁ。マイク育馬の悪役っぷりも絶妙で、モデルいるんでしょうか。とあるTVタレントさんに私の頭の中で変換されてしまうんですが(苦笑;)。
 TVや何かでしきりと騒がれた「飛沫感染」、伊坂さんそれに着想を得たのかしら。わざと〈先行上映〉を見ようとする行為には、ちょっと「うわ~;」と眉を顰めてしまいました。衛生観念が変わって来てるから、そのせいもあるんでしょうが。
 人質籠城事件の顛末は、それは無理矢理すぎないかい、とは少々思いつつ。でもそれが本当に真相なら後味いいよね、そうだといいね、と思う自分もいましたね~。
 ネコジゴハンターの話、番外編出ないかなぁ。でもそしたら、ロシアンとアメショーの二人が悪役になっちゃうかもだけど。