読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙Ⅶ   支倉凍砂著/文倉十イラスト  メディアワークス電撃文庫  2021年

  『狼と羊皮紙』シリーズ7冊目。ネタばれになってるかも、すみません;

 死者の乗る船が渡来する港町・ラポネルでの騒動を後にして、コルとミューリは再びラウズボーンへの帰路につく。
 教会の不正を糺し、王国との争いを収める決意を新たにするコル。賢狼の娘ミューリはというと、理想の騎士冒険譚を執筆するのに大忙しな様子で。
 そして、ラウズボーンへと戻った二人を待っていたのは、ハイランドと教皇庁の書庫管理を務めるカナンだった。カナンは“薄明の枢機卿”コルによる聖典俗語翻訳をさらに世に広めるため、教会が禁じた印刷術の復活を持ち掛ける。それが叶えば、ハイランドが抱える慢性的な財政難も少しはましになる。
 さっそく職人を探すこととなったコルとミューリ。何か情報を持っているのでは、とあてにしていた書籍商のル・ロワは、既得権益を守るため、その職人を追い詰める側の人間だった。
 だが、きっかけは思わぬ処からもたらされた。旅の楽師が各地のネタを交換しようと集まる紙屋に、まるで同じ内容の冊子が何冊も見つかったのだ。刷られている紙の特徴から、二人は紙工房に、ひいては禁忌の技術を持つ職人ジャンに辿り着く。
 作家志望のジャンは、印刷技術を自分の創作品の為に使っていた。だがその才能のなさは如何ともしがたく、世を拗ねた生活を送っていたらしい。ジャンをその気にさせる為に『心を震わせる物語』を探す一行。カナンはコルに、聖人になれ、とまで言ってきた。
 確かにそれで全ては解決する。だがコルは乗り気になれない。折も折、コルは人違いから拉致され、第二王子クリーベントと相対することになった。
 戦のなくなった世界で、活躍の場を失った貴族の息子たちをまとめるクリーベントを、コルは嫌いになれなかった。だがこのままではミューリを始めとするハイランド一行は、クリーベントを許さないだろう。彼を救う方法はないか。
 修道院兼孤児院の予定地の由来、その修繕費用の捻出。クリーベントとハイランド兄妹の和解。いくつもの問題を抱え、コルは一つの案を思いつく。…   (折り返しの紹介文に付け足しました)

 とうとう印刷技術まで来ました。そうか、それで職を失う人からの反感、ってのはそりゃあるよなぁ。稀覯本を扱う商人の反発も。
 詩から小説への変換点でもある訳ですね、今までは歌に乗せて伝わっていたものが本の形で普及していく。つまらない作品を書いている、とされてしまったジャンには、同情の念を禁じ得ません(苦笑;)。まぁ、活躍の場を貰ったのでよかったのかなぁ。
 貴族の第二子第三子が活躍する場として、やはり新大陸の名が出てきました。これは、体のいい棄民のような気がしないでもない。コルたちもいずれ渡るんでしょうか。そこまで話広げるかなぁ。
 次巻に続きます。