読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

死にがいを求めて生きているの 朝井リョウ著 中央公論新社 2019年

 「螺旋プロジェクト」平成篇。

誰とも比べなくていい。
そう囁かれたはずの世界は
こんなにも苦しい――
「お前は、価値のある人間なの?」

朝井リョウが放つ、〝平成〟を生きる若者たちが背負った自滅と祈りの物語

植物状態のまま病院で眠る智也と、献身的に見守る雄介。
二人の間に横たわる〝歪な真実〟とは?
毎日の繰り返しに倦んだ看護師、クラスで浮かないよう立ち回る転校生、注目を浴びようともがく大学生、時代に取り残された中年ディレクター。
交わるはずのない点と点が、智也と雄介をなぞる線になるとき、 目隠しをされた〝平成〟という時代の闇が露わになる。

今を生きる人すべてが向き合わざるを得ない、自滅と祈りの物語。  (紹介文より)

 …色々胸にイタい。
 成績がよかったり駆けっこが速かったり、小さい頃はスクールカーストの上位にいた子供が、段々下位(?)に落ちて行って、それが自分で認められなくて、色々な活動に病的に頭を突っ込む。やったこともないジンギスカンパーティー(略称ジンパ)の中止撤回要求とか寮の自治問題とか、でも所詮付け焼刃、底の浅さもばれていて、周囲にはかえって見限られている。この辺りの書き方が本当に上手くて、作者、意地悪いよなぁと感心しました。堀北雄介のお父さんの肩書『リスク統括室長』なんか、読者から見てると厭な予感しかしない(苦笑;)。
 自分が都合のいいように、美しく見えるように事実を塗り替える。ここら辺、もうそんな風に思い込んでしまっているとサイコパス風になるのかもしれませんが、この辺りはかろうじて自覚はあるのね。その分、読者に突き刺さってくるような。
 やりたいことがなくてもいいじゃん、と開き直れないかなぁ。なまじ小さい頃優秀で、ちやほやされた分、抜け出せないのかしら。それも含めて青春の蹉跌か。ホームレス救済活動にのめり込む波多野めぐみが 高校時代の彼氏から受けた言葉や仕打ちは、本当に許せないと思いました。全く、品性下劣。

 螺旋プロジェクトとしては、これでは山族 いいとこないじゃんとはこっそり思いました。
 このテーマ、和解の題材とする作家が多いですね。