読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

紐結びの魔導師 乾石智子著 創元推理文庫 2016年

 連作短編集。

 紐結びの魔導師
ローランド地方、サンサンディアにて。貴石占術師カッシは、紐結び(テイクオク)の魔導師リクエンシスを訪ねてきたという。色々理屈はつけているが、要はリクエンシスが持つ<炎の玉髄>が目当て、それは笑ってしまうほどあからさまなこと。エンスは同居している書記のリコと共に、カッシをからかってやろうといたずらを仕掛ける。折も折、エンスとは因縁浅からぬ<神が峰神官戦士団>も魔導師狩りに現れて…。

 冬の孤島
エンスがまだ若かった頃。<銀戦士>からの逃亡も相まって、エンスは一冬をココツコ島で過ごすことに。ココツコ島には二つの化け物、<燃える木>のファイフラウと大地から現れて人を食らう鳥ブロンハがいて、特に冬に活動が活発化するので、その時期に島を訪れるもの好きはいないのだとか。エンスはその地で昔浅からぬ因縁のあった男と再会、<炎の玉髄>を手に入れて、どういうわけか化け物胎児をすることになってしまう。

 形見
帝国暦1703年。エンスは皮で銀戦士の死体を引き上げる。一年前、<神が峰神官戦士団>解散の噂が流れていた。

 水分け
相棒のグラーコが危篤になった。心臓が弱っているらしい。
出逢ったのは帝国暦1453年、最初から態度は大きかった。何でもかんでも記録する癖のあるグラーコ、反乱軍の一味と間違われて処刑されそうになったエンスを助けてくれたグラーコ。思いつくまま、記憶に頼り切りだったエンスのテイクオクの魔法を書き留めてくれたグラーコ。思い起こすうち、エンスに一つのアイデアが浮かぶ。

 子孫
帝国暦1785年。見た目は若いがすっかり年を取ったエンスは、踊り子のニーナと旅していた。嵐を避けるために、エンスは<エンス村>に立ち寄る。

 魔導師の憂鬱
帝国暦1788年。パドゥキアで、グラーコの書付を冊子にしてみたら。…ニーナの提案に乗り、エンスは砂漠を旅することに。三百年以上生きてきたのに初めて目にするものばかり、すっかり心が内向きになっていたエンスの心持も変わって来る。途中であったギデスディンの魔導師ケルシュはエンスに弟子をとるように言う。喜びを見出すことをアドバイスする。…


 この作者、やっぱり文章巧い、としみじみ感じた一冊。…いや、前に読んだ本が分かりにくかった、ってのもあるんでしょうけど(苦笑;)。
 エンスに合わせたんでしょうね、明るくお気楽な性格が地の分にまで出てる、あくまで陽性。楽しくすらすら読めました。まだまだ奥があるんだぞ、と思わせる内容がファンにはたまらない。…これが行き過ぎると新参者を締め出すことにもなりかねないので、そのあたりの匙加減が難しそうですけど。
 解説が池澤春菜さん。熱のこもった解説でした。…同志だねぇ(笑)。