読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

憲法九条を世界遺産に 太田光・中沢新一著 集英社新書 2006年

 実に、日本国憲法とは、一瞬の奇蹟であった。
 それは無邪気なまでに理想社会の具現を目指したアメリカ人と、
 敗戦からようやく立ち上がり二度と戦争を起こすまいと固く決意した日本人との、
 奇蹟の合作というべきものだったのだ。
 しかし今、日本国憲法、特に九条は次第にその輝きを奪われつつあるように見える。
 この奇蹟をいかにして遺すべきか、いかにして次世代に伝えていくべきか。
 お笑い芸人の意地にかけて、芸の中でそれを表現しようとする太田と、
 その方法論を歴史から引き出そうとする中沢の、稀に見る熱い討論。
 宮沢賢治を手がかりに交わされた二人の議論の行き着く先は……。
                                 (折り返しの紹介文より)


 出版当初から、いつか読みたいなぁと思いつつ手が出なかった一冊です。一応私、爆笑問題のファンなんですけどね。
 確かTV番組『太田光の私が総理大臣になったら…秘書田中。』がゴールデン枠に移動してしばらくした頃、出版された本だった覚えがあります。当時私は太田光さんの、自分の思いを必死で伝えようとするあぶなっかしいような姿を、はらはらしながら見ていました。何だかこちら側まで胸が痛くてねぇ(笑)。
 この頃はあの番組を見ていても、そんな締め付けられるような思いはめっきりしなくなりました。今ならこの本も平静に読めるかも、と手に取りました。

 ある程度の基礎知識を持った人のための本だなぁ、というのが第一印象。石原莞爾や田中智学と言う人を私は知らなかったし(きっと日本史でやってたんだろうなぁ;)、宮沢賢治がその人たちの思想に深く傾倒していたことも知らなかったのですが、それは大前提という感じでした。時々引用される宮沢賢治の作品も、内容の紹介が欄外とかにある訳ではないし。『千両みかん』とか落語のネタは紹介してるのにね(笑)。確かに、宮沢賢治の作品に「自己犠牲」が多いような気はしていましたが、そういう背景があったとは。
 戦前、戦争という方向に突き進んだ国民大部分の意見をもう一度検証する必要がある、というのはその通り。隠してるだけでは駄目かもしれない。もう一度繰り返してしまうかもしれない。これも太田さん、以前TVで仰ってましたね。
 自分の思っていることを芸に昇華して見せる難しさ、ってのも仰ってましたよね。かなり前の話ですが、TV『爆笑問題のススメ』の中で、それができないことについて小林信彦さんに謝ってらっしゃったのを思い出しました。ただ、太田さんはもう不器用が芸になってる感じもするんですけど。中沢さんの、「太田さんは下手そうに見えて、そのぶきっちょな動きで云々」の言葉にはこっそり笑ってしまいました(笑)。でも私、実は談志さんの上手さが分かんないですよね~。これは関西という地域性が大きいのかなぁ。
 九条について私は、失くすのは勿体ないなぁ、と思っています。一度失くしてしまったらもう二度と復活できないと思うから。