読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

深泥丘奇談 綾辻行人著 メディアファクトリー 2008年

 京都・深泥丘(みどろがおか)を舞台に、病弱な本格推理小説作家の不思議な体験を描いた連作短編集。

『顔』
強い眩暈に襲われ、深泥丘病院に掛かったミステリ作家の「私」。日頃の体調不良もあって胃カメラを呑むことに。モニターに映った胃壁には奇怪な隆起が…。

『丘の向こう』
 石倉医師の勧めもあって散歩を始めた「私」。丘の向こうに線路を見つけて驚いた。だが妻はQ電鉄如呂塚は以前からあった、と素っ気ない。時々珍しいものが走る、と聞いて「私」は看護師の咲谷と共に列車を見に行く。

『長びく雨』
 雨の日が続いている。戸棚から出てきた子供の頃の写真に不審なものを見つけた「私」だが、妻は「あれかもね」と謎の言葉。雨の中、撮影場所と思われる黒鷺川の太鼓橋まで行ってみると、果たして同じようにぶら下がっているものが…。

『悪霊憑き』
 散歩の途中、黒鷺川の支流深蔭川「私」は溺死体を見つけた。被害者は井上奈緒美、以前都会でホステスをしていたこともあるこの女性は、この土地の水妖*****に取り憑かれていた。霊能者・宝月清比古を呼んでの悪霊祓いは失敗したかに思われたが、実際、彼女には火妖*****が霊交代して取り憑いたらしい。

『サムザムシ』
 歯が痛み始めた。以前妻の実家のある猫目島で治療をした箇所だ。妻や深泥丘病院の歯科医は「一生ものの筈なんですが」と意味の判らないことを言う。

『開けるな』
 如呂塚遺跡でお土産品「遺跡発掘セット」を妻が買ってきた。「私」が掘り出したのは妙な形をした鍵。その日から悪夢を見始めたこともあって深泥丘病院に持って行くと、石倉医師は「私」を病院の地下三階に連れて行く。

『六山の夜』
 五山の送り火全てが病院の屋上から見られるとかで、「私」は石倉医師に送り火見物に誘われた。しかも今年は六山だと言う。当日、いよいよ六番目の山に火が入る時になって、いきなり「私」は酷い眩暈に襲われる。

『深泥丘魔術団』
 深泥丘病院で〈奇術の夕べ〉が開かれた。妻と一緒にマジックを楽しんでいた「私」は壇上に誘われ、箱の中に入る。右腕が、左腕がばらばらにされて行って…。

『声』
 大晦日、異様な声を聞きつける「私」と妻。インフルエンザで熱に浮かされながら、窓から懐中電灯で声のする方向を照らしてみる。…

 装丁も可愛らしいこの一冊。咲谷看護師の名前「由伊」ってのは『眼球奇譚』とも繋がってるんでしょうか。
 サムザムシ、いいなぁ。虫歯の治療で歯がボロボロ、再生医療で歯ができたとか言うニュースに釘付けになり、定期検診を欠かせない(と言うより丁度その頃詰め物のどれかが外れて歯医者に行かざるを得なくなる;)私としては、一生歯医者に行かなくて済むなら頑張ってサムザムシ口の中に飼うよ(笑)。
 「記憶が曖昧で…」と何度も重ねられる記述も、後半になると「また言ってるよ」と笑えてくるように(←こらこら・笑)。
 妻の岡山の友人「ヤッちゃん」は小野不由美さんのエッセイ『ゲームマシンはデイジーデイジーの歌をうたうか』に出てきた「岡山のおさる」さんのことなんでしょうか(笑)。普段は超常現象を信じない奥さんを小野不由美さんと重ねて見てしまうのは仕方ない所ですよね~。小野主上十二国記の続き書いて下さいね。