読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

博士の愛した数式 小川洋子著 新潮社 2003年

 2004年第一回本屋大賞受賞作品。

 1992年、「私」は家政婦として「博士」の元に派遣された。依頼主は博士の義姉で、博士は1975年47歳の時交通事故にあって以来、記憶力が80分しかもたないと言う。80分より前のことがわからない博士は、自分の体に思いつく限りのメモを貼り付け、自分だけの数学の世界を追いかけている。毎朝私は「初めて会う家政婦さん」で、私の靴のサイズや誕生日の数字を尋ね、その数字に美しい意味を持たせる。ある日、「私」の10歳の息子の話を聞くと、博士は息子を家へ連れてくるよう主張する。「子供を独りぼっちにしておくなんて、いかなる場合にも許されん」…そして、やって来た息子を「ルート」と名付け、誠意と品性を持って相対する。
 言葉を瞬時に逆さまにし、一番星を誰より早く見つける博士。
 私とルートは博士から、数字が含む様々な不思議を教わる。巨大素数、双子素数友愛数、そして江夏の完全数阪神ファンのルートと博士と野球観戦をしたその夜、博士は熱を出して寝込み、私は家政婦を馘になる。
 たまらず博士の家に行くルート。私は義姉に呼び出され、博士の執り成しもあってまた博士の元の通えることになった。ルートの11歳の誕生日を祝った翌々日、博士は医療施設へ入る。博士は80分の記憶も、覚束なくなっていた。…

 …外で読まなくてよかった。もうぼろぼろ泣きました。涙も鼻水もぐしょぐしょで、母から「風邪ひいた?」と尋ねられたほど(笑)。
 何なんだろう、この琴線の触れ方は。博士の数字に対する敬意、真摯な態度。ルートへ注ぐ無償の愛情。ルートもそれを真正面から受け止めて、きちんと返す。本当、「賢い心」が詰まってる。
 読んでて実は、祖父を思い出しました。私は三文安いお祖父ちゃんっ子で、本当に可愛がって貰いました。でも当時の私はそれに気付かず、当たり前のことと受け止めていました。今なら、断片的に覚えてる記憶でさえ、どんなに自分が愛情を注いで貰ったか解るのに。ルートのように、きちんと「返す」ことは全く頭になかった。「賢い心」を持ってないのが辛い。『ドラえもんしずちゃんのパパの様に、「存在するだけでいいんだ」と思って貰えてたらいいんだけど。でも孫の立場から言う台詞じゃないな(笑)。
 友人から薦められて読んだ本です。でも、同じ友人から「『妊娠カレンダー』は駄目だった」とも情報貰ってます。…さて、この先どうしようかなぁ。