読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない~A Lollypop or A Bullet~ 桜庭一樹著 富士見ミステリー文庫 2004年

 13歳の女の子の、一ヶ月の出来事を描いた作品。
 ネタばれに、多分なるな、すみません;

 あたし・山田なぎさが住んでいるのは、中国山脈の麓の町。都会の人が「田舎に作ったほうがいい」と考える全てのものがここにある。原発、刑務所、少年院に精神病院、それから自衛隊の駐屯地。
 父親は10年前、漁に出て嵐にあって死んでしまった。パート勤めの母と兄・友彦と三人で、生活保護を受けながら暮らしている。友彦は今流行りの引きこもり。その美しい容姿もあいまって、あたしは兄を現代の貴族だと思っている。
 二学期が始まってすぐ、転校生がやってきた。名前は海野藻屑。この町出身の有名人、バンドボーカリスト(但し大麻所持で捕まってからは忘れ去られた存在)海野雅愛と、有名女優との子供。自分のことを「ぼく」といい、2リットル入りペットボトルの水をぐびぐびと飲みながら、自分は人魚なのだ、いつか卵をぷちぷち産んで泡になるのだと判り易い嘘をつく女の子。近付くクラスメイトをうっちゃって、何故かあたしに懐いてくる。そんな彼女を友彦は、「砂糖菓子の弾丸を撃っている」と表現する。
 学校でウサギの世話をし、家で兄の面倒を見るあたしに、担任の先生は「高校へ行け」と言う。引きこもりの兄に必要なのは他人で、山田に必要なのは安心だ、と。あたしは藻屑と逃げ出そうとするが、藻屑は逃走準備のため家に入ったきり、二時間経っても出てこない。
 痣だらけの藻屑の体、引きずる足、聞こえない左耳。雅愛の逆鱗に触れて殺された犬、惨殺されたウサギたち。いやな考えが頭から離れず、あたしは友彦と蜷山に登る。藻屑が本当に人魚で、本当に泡になって消えていたらいいのに、と思いながら。…

 桜庭さんの作品を読むのは初めてです。図書館にあった一番古い作品を借りてみました。
 …これはすごいわ。
 虐待されながら父親を憎めない藻屑。痣を汚染だと言い張り、父を庇う。藻屑の撃つ弾丸は砂糖菓子でできていて、相手に傷はつけられない。兄を世話することで自分を認め、自分の不幸に酔っていたなぎさは、藻屑の境遇に自分を見直す。藻屑は結局大人になれない。空気が読めない、いい加減だと思われていた担任教師の「おまえには生き抜く気、あったのか……?」の言葉が痛い。ちゃんとした大人がいたと言うのに。
 花名島くんがMに目覚める(笑)辺りは、ちょっとどうかとは思いましたが(笑)。
 でも、これ、イラストあってないよ。こんなロリロリした絵は違う。かえって損してると思う。
 もしかするとこの作家さん、ヤングアダルト系の児童書とか向いてるかもしれない。