読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

翼竜館の宝石商人 高野史緒著 講談社 2018年

 1662年晩夏のアムステルダム。宝石商人ホーへフェーンがペストで死んだ。
 しかし遺体が埋葬された翌日、厳重に人の出入りが管理された館の、鉄格子がはまった部屋で、ホーへフェーンに瓜二つの男が意識不明で発見される。
 画家レンブラントの息子ティトゥスと記憶を失った男ナンドは、ひょんなことから事態に巻き込まれ、謎の解明に乗り出す。

 ペストの恐怖。蘇った死体。二重密室。
 17世紀ネーデルラントの濃い闇の中から浮かび上がる真相とは。         (帯文より)


 1662年、アムステルダムにて。ナンド・ルッソは記憶のないまま、町を彷徨っていた。名前も実は自信がない、持っていた書類に書いてあった名を名乗っただけで、それが自分のものかどうかすら分からない。
 市庁舎の回廊での競売場で、ナンドはとある青年に声を掛けられる。青年の名はティトゥス、画家レンブラントの息子だという。羽振りがよかったのは遠い昔、今は借金のカタに家財を競売にかけられている有様。ナンドが持っている指輪が母の形見の品のような気がして声をかけた、一目見せて欲しいという。
 そのままティトゥスの家へ、招かれるまま宝石商人ニコラス・ホーヘフェーンの屋敷へ。ホーヘフェーンは酷く取り乱した様子で言っていることも要領を得ない、どうやら15年前レンブラントに描いて貰った絵について、訊きたいことがあるらしいとようやく理解できた所で、だがその話も来客によって中断された。外科医のカルコーエン医師と内科医のアニェージ医師、ホーヘフェーンは早々にティトゥスを追い出してしまう。翌早朝、ホーヘフェーン宅からこっそり棺が運び出され埋葬された。ホーヘフェーンはペストで死亡したらしい、それこそ指先まで黒ずんで。
 ティトゥスは再びホーヘフェーン宅を訪ね、そして昨晩面会した書斎から繋がる隠し部屋にも似た金庫室で、瀕死のホーヘフェーンを発見する。壁にはレンブラントによる画、だがそこにあるべき人の姿がない。「町を彷徨う隻眼の王」の噂と相まって、「レンブラントの画から死んだ人間が抜け出てくる」との噂が流れ始めた。
 いつの間にか行方をくらませたアニェージ医師、ところが全くの別人がまたアニェージ医師としてこの町に到着してきた。ホーヘフェーンの生き別れの双子の兄弟、レンブラントが過去に描いたのは船乗りになったこの兄弟の方らしい。
 レンブラントは言う、見て、ただありのままにそれを理解すればいい、と。レンブラントが導き出した真相とは、そしてナンドは。…


 おお、名探偵レンブラント!(笑)
 色々エピソードがふらふらと詰まった感じで、わぁどうしよう、覚えてられるかな、って不安だったのですが、最後、レンブラント親方が整理整頓してくれました(笑)。何だ何だ、案外すっきりしてたんだな。
 で、まぁ、殺人事件も死体の謎も解き明かされるんですが、それよりナンドの正体ですよ。おお、と思わず声が出そうになりました。いや、それ有りか、そういうことか!
 そいえば、『小公女』でもインドのダイヤモンド鉱山云々、って出て来てたよなぁ、あの頃のお話なんだなぁ、と妙な所で懐かしさを感じました。…また読み直そうかな。