読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

玉依姫 阿部智里著 文藝春秋 2016年

 『八咫烏』シリーズ5冊目。
 ネタばれあります、すみません;

 舞台は現代日本。両親を交通事故で失い、祖母と暮らす女子高生の志帆は、閉ざされた村の儀式の生贄に選ばれてしまう。彼女が連れて行かれた山奥で見た信じがたい光景とは――。
 百年前の記憶を巡る謎が解かれた時、世界の深層が明かされるシリーズのエピソード0。   (出版社HPより)

 1995年、5月。高校生の葛野志帆の前に現れたのは、伯父と名乗る男だった。祖母と二人暮らしの志帆、その祖母はかつて伯父を置き去りにして、母のみを連れて村を逃げ出したという。祖母が村を出た原因を知りたい志帆を、伯父は志帆を村へと誘う。言われるまま村を訪れた志帆は、そこで山神の生贄にされてしまった。
 大猿の群れに連れて来られた禁足地、そこにいた「山神」は半人半猿の醜悪な赤ん坊だった。「喰ろうてやる」、と繰り返す言葉に思わず逃げ出す志帆、それを止めたのは八咫烏、奈月彦と名乗る若者だった。御供と呼ばれる生贄の役割は山神を産み育てること、だが先代の御供は山神を産んで逃げ出してしまったらしい。志帆が代わりに母親として山神と相対しなくてはならないという。
 不思議な女に導かれて、一旦は志帆も逃げ出した。山神は癇癪のまま八咫烏たちを焼き殺す。志帆が逃げ込んだ山荘には男が一人、匿ってくれた彼は実は大天狗であり、奈月彦と通じていた。もう山神を倒すしかない、と決意する奈月彦に、志帆はもう一度神域に戻り、山神を育てる覚悟を決める。
 山神たちは志帆のペースに巻き込まれ、徐々に落ち着きを取り戻した。志帆にまで治癒の力が宿り、全て上手く行くかと見えた矢先、志帆を心配して伯父の家を訪れた祖母が、心臓発作に襲われてしまう。
 祖母の見舞いに行きたいとの志帆の願いは叶えられなかった。山神はかろうじて葬儀への参列を許すが、村人たちは志帆が山神から逃げて来たと勘違いし、志帆を殺そうとする。村人たちの行動を知った山神は怒り、荒ぶる神となって村を襲った。
 山神と御供の間に何があったのか、八咫烏は過去に何をしたのか。大天狗と奈月彦の前にふらりと現れる「英雄」とは何者か。引き継がれる記憶がよみがえる。…


 現代と結びついた世界観に不安を覚えた前巻。…いやぁ、見事に収束しましたね。志帆の価値観は私には理解できるものではなく、どちらかというとお祖母さんの考えの方が私は近かったですが;
 奈月彦を外側から見るとこういう風になるんだな、というのも新鮮でしたね。山神に理路整然と怒られる様に、こっそり「…ざまあみろ」と思ったのは内緒です(苦笑;)。山神に殺された部下たちの中には、雪哉の同窓生が含まれていたんだろうか、その可能性はかなり大なのでちょっと不安です。奈月彦を庇って重傷を負った烏は雪哉なんだろうか、それとも。
 これから志帆たちはちゃんと暮らしていけるのかしら、そりゃ烏たちが荘園から色々貢いでいくんだろうな、とは思うんですけど。
 さて、残るは大猿との確執でしょうか。次巻に続きます。