読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

この青い空で君をつつもう 瀬名秀明著 双葉社 2016年

 ネタばれあります、すみません;

 12月23日、高校2年生の早季子に宛名だけが印刷された郵便はがきが届く。25日、クリスマスの朝、そのはがきで「猿」が折られていた。その猿を見るうち、はがきの文字を目にした早季子は驚く。10か月前に亡くなった同級生、和志の字だったのだ。かつて、さよならも言えず亡くなった同級生の和志が、何かを伝えようとしているのか。止まっていた早季子の心が、動き始めた――。
 想い出さえも、残せなかったあの日にいま、ふたりは未来を繋ぐ。
 力強い希望が溢れる、青春ラブストーリー。               (内容紹介より)


 藤枝早季子は高校二年生、商店街の和紙屋の娘。もう亡くなってしまった祖父は、折り紙教室を開いたりもしていた。通っている高校は質実剛健、伝統ある進学校。文化祭などの学校行事も充実している。
 一年生の時、同じクラスだった望月和志は、その祖父の折り紙教室に通っていたという。おそらく早季子に好意を寄せていた和志、だが早季子はそれに応えることができなかった。早季子が自分の気持ちを自覚したのは、和志が死んだ後だった。
 文化祭に当たる卯高祭には積極的に参加した和志、折り紙で地球生命の誕生から未来までを描く、というクラスの仮装を企画から立ち上げ、だが突然の豪雨で本番は思うようには進まず、そのまま病が重くなって亡くなってしまった。早季子には遺品として和紙の折り紙が渡され、しかし早季子はそれを使うことができなかった。
 早季子の元に何通か届く、宛名だけが印刷されたはがき。やがて夜中、それはひとりでに形を作り、学生服を着た紳士が折り上がる。呼応するように遺品の和紙が桜を形作り、早季子が折ったなまずの折り紙が身じろぎする。店を訪れた女性客は早季子に、「ふしぎなことが起こるかもしれないけれど、怖がらないで」と囁きかける。「男の人はいつだって、奇跡を起こしたいと思っているものだから」。
 難病に侵された闘病生活の合間に、和志は知り合った工学部の准教授と、紙による情報伝達の可能性に行き当たっていた。たとえ死んでゆくとしても、人は未来を作ることができる。和志の意思が、早季子に、弟の和希に伝わっていく。…


 何だか瀬名さんらしくない書き出しだなぁ、と思ってたら、最終的には本当に瀬名さんの話になりました。最新工学、ドラえもん、未来への可能性。
 面白かったです。折り紙とは、凄い所に目を着けたなぁ。
 私は不器用な質なので、折り紙は鶴を折るのが精いっぱい。折り方の本を読んでも、途中で頭が図面を理解することを拒否します(苦笑;)。でも鑑賞することは別で、かつて『TVチャンピオン』であった折り紙王選手権なんかは、素直におおお、と思って見てました。あんなの考え出す頭も、作り出せる指先も凄い。
 卯高祭は、成功させてあげたかったなぁ。槇原敬之の唄う『銀の龍の背に乗って』は、私知らなかったので、どんな曲か検索掛けましたよ。高校野球までは盛り込み過ぎでは、とも思いつつ、でも登場人物一人一人への愛情も感じられる展開でしたねぇ。
 早季子はちゃんと次の恋ができるんだろうか、とちょっと心配になったり。これで案外、いい思い出として昇華できるような下地が整った、ってことなのかな。まさしく、青春小説でした。