読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ニセモノの妻 三崎亜記著 新潮社 2016年

 短編集。

終の筈の住処
 妻とともに入居した新築マンションには、まるで人の気配がなかった。引っ越しのトラックも見かけたし、駐車場には何台も乗用車があるのに十人を見かけない。住民自治会への参加者もいなかった。二キロ以上離れた住宅街にはマンション建設反対ののぼりが立っているが、反対理由も見つからない。

ニセモノの妻
 ある日妻が、自分はニセモノなのではないかと言い出した。調べようにも、そのあまりにも非人道的な方法に「僕」はそれを拒否する。僕とニセモノの妻は、ホンモノの妻を探すために、ニセモノが多くいるというS市に向かうことにした。


 坂愛好家が増えだした昨今、自分の家の目の前の坂が自然従属派に占拠されてしまった。バリケードの向こう側には、先日坂について意見が食い違い、夫婦喧嘩した妻の姿がある。住民たちは坂を取り戻そうと東奔西走するが、「階段派」なども隙に乗じて暗躍し始めた。

断層
 妻が断層の被害にあってしまった。彼女は断続的に現れては、9月12日を少しずつ過ごしていく。妻に今日が9月12日でないことを気づかれてはならない。夫は他の被害者家族と共に、妻との9月12日の日常をこなしていく。…


 初期に戻ったような短編集。うん、やっぱり好きだ。
 よくこんなこと思い付くよなぁ、と感心することしきりな作品ばかり。で、今回驚いたのは『断層』での夫さんと妻とのいちゃいちゃっぷりでした。…三崎さん、こんな描写の書ける人だったんだ…! それだけにラストが何とも哀しいんですが。
 初期の雰囲気に似ている、と言いながらも少しずつ変わってはいるんだな、と思いました。