読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

蓮の数式 遠田潤子著 中央公論新社 2016年

 ネタばれになってるかも、すみません;

 結婚して十三年、不妊治療を始めて十年、安西千穂は四回目の流産をした。夫は病院にも来なかった。
 義母と夫との異常なプレッシャーの中、千穂は一人の青年と会う。夫が起こした接触事故の後始末を押し付けられたのが切っ掛け、白いニット帽をかぶった青年とはコンビニで再び出会った。青年がどうやらディスカリキュリア(算数障害)らしい、と気づいた千穂は、過去にそろばん塾講師として同じ症状を抱えた教え子を救ってやれなかった後悔も相まって、その青年に関わって行く。青年は高山透と名乗った。
 新藤賢治は十二年前、妻・美津子を亡くした。美津子は地区の民生委員として、DV夫から逃げて来た若い女大西理香とその息子・麗を親身に世話した結果、理香に殺されてしまった。ある日、賢治はTVの画面に、かつて我が子のように可愛がっていたその少年の面影を宿した青年を見かける。
 母親に殺された筈の大西麗は実は生きていたのか。もともと妻の死に納得が行っていなかった賢治は、周囲の制止も聞かずに、その青年を探し始めた。
 千穂は夫から透との仲を邪推され、義母を交えた修羅場の後、透と逃亡する。透の実家だという金沢へ、そこでの束の間の幸せの後、夫と賢治の追跡を受けて大阪へ、さらに赤穂へ。透の話す「蓮の花を見に行こう」という言葉のままに。…


 今時いるのか、こういう夫や姑が?? …いるんだろうなぁ; 子供がいないならそれで、で体裁が気になるなら養子縁組するとかすれば教育心理学者としての面目はさらに立つだろうに、そこまでのドライさというか覚悟はないんだなぁ。
 いやぁ、相変わらずの不幸な話です。重いし辛いし、特に大西麗に関わるそれぞれの抱える秘密や思いが明らかになるくだりは、なるほどと思いながらもしんどかった。いや、作り過ぎじゃないか、というエピソードもありはするんですが、でもまるで「いい人」「できた人」に見えた美津子が(賢治目線で描かれたらそうなるよなぁ)理香を追い詰める結果になる余裕のなさ、思いやりのなさにははっとしました。
 賢治の娘・恵梨の抱く千穂の決断への感情は、事情を何も知らない人から見たらこうなるんだろうなぁ。でも千穂の、子供は死なせたくない、麗の意思も尊重したい、って思いは、読者から見ると分かるんですが。
 子供が大きくなって実の両親のことを知ったら、どういう感情を抱くのか。できれば当事者の口から説明できる環境があってほしいものです。