読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

陽気なギャングは三つ数えろ 伊坂幸太郎著 祥伝社 2015年

 シリーズ9年ぶりの三作目。
 ネタばれになってるかな、すみません;

 雪子の息子・慎一がバイトしているホテルにて。週刊誌記者・火尻政嗣のあまりにも不遜な態度に、久遠は思わずパスケースを掏り取ってしまった。雪子にたしなめられて16階の部屋まで届けに行くと、火尻は暴漢に襲われていた最中だった。
 結果的に火尻を助けることになる久遠。ところが火尻は、久遠の左手の怪我から、巷で話題の銀行強盗の一人が久遠なのではないか、とアタリをつけてくる。
 雪子に対する当たり屋未遂、成瀬に対する痴漢冤罪。それぞれ機転で切り抜けたものの、ギャングたちの周りで不可解な事件が起きる。そしてとうとう、火尻は直接成瀬に脅しをかけてきた。自分の借金を何とかしなければ、あることないこと記事に書いて、ギャングたちを社会的に破滅させるという。実際、火尻は過去に何度も事件被害者のプライバシーを暴いた実績があった。
 そもそも火尻を襲った人物は誰なのか、どういうトリックを使ったのか。火尻の餌食になった女性被害者、失踪したアイドル宝島沙耶、ジビエ料理を得意とする料理人。火尻がはまった非合法なカードギャンブル、そのディーラーが大切にしているペットの亀。様々な人や物事が交錯し、ギャングは自分たちに降りかかった火の粉を振り払うべく動き始める。…


 正直、9年ぶりともなると前回までの内容を結構忘れてまして。主人公銀行強盗だったよな、確かコン・ゲームの話だったよな、くらいのほのかな記憶を頼りに読み始めました。で、登場人物の詳細な説明とかもないのよね(笑)。でもここでそれを入れてしまうと、文章のリズムは崩れてしまうだろうから、難しい所です。
 で、やっぱり面白かったです。細かいエピソードまで覚えておかなくちゃ、と使命感に燃えつつ読みました。うん、絶対出てくると思ったんだ、久遠の動物に対する異様な記憶力とか仮死状態になる薬とか逃げ出した凶暴な犬とか! 火尻の嫌な人っぷりの描写は、今の伊坂さんならではなのかも。でもあちこちの伏線が繋がって最後にすかっとする瞬間、これでこそですよ。やっぱり好きだなぁ。
 ユーモラスな文章も楽しい。言葉の使用例「シリーズを重ねるに従って書くのが大変になる」には思わず笑ってしまいました。すみませんねぇ、苦労させて。
 あとがきには表紙に使われている覆面への謝辞、いやでもこれは捨てないと思うわ。後々「伊坂幸太郎記念館」とかできたら、展示しなきゃいけないような物ですもの(笑)。
 もし次があるとしたら、もうちょっと短いスパンでお願いします。シリーズが続くと大変でしょうけれど(笑)。