読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

the SIX 井上夢人著 集英社 2015年

 不思議な能力を持った少年少女を描いた連作短編集。

あした絵
 母親が従姉妹同士という関係で、小学生の杉森遙香の面倒を見ることになった和真。遙香は小学校に行けず、ただひたすら絵ばかり描いている。やがて、和真はその絵の何枚かが翌日起こる出来事を描いた「予知絵」だと気付く。そのことに遙香自身も傷ついていることも。カミナリに撃たれて飛ばされているように見える少女の絵を描いた遙香は和真に、この女の子を助けて欲しい、と頼む。

鬼の声
 児童相談書に勤める畠中佳織は、虐待が疑われる少年・瀧口克徳を調査し始めた。彼は授業中でも奇声を発することが度々あったらしい。頭の中に響く声を「鬼の声」と表現する克徳、その声は最近頻繁に起こっている放火と関連があるようだ。放火犯は克徳なのだろうか。
 
空気剃刀
 二年前、児童養護施設≪すくすく学園≫を逃げ出した松田健太は、今公園で野宿をしているらしい。健太の周囲では、何故か怪我人が多い。彼が追い詰められると、ナイフで切り裂かれたような怪我をする人が出るのだとか。心理学の講師をしている飛島潤は、健太を保護しようと公園に通う。

虫あそび
 奥村敦志は学校でイジメにあっている。敦志は首謀者の井関が虫が苦手なことを知って、井関に虫をけしかけようと企んだ。敦志は虫が異常発生している民家がある、とのニュースを聞いて虫を捕まえに川森町まで出向く。そこには、虫を引き寄せる体質を持った幼女・下畑みさきが祖母と二人で暮らしていた。

魔王の手
 ガソリンスタンドの火災事故に巻き込まれた高校生には、電撃傷があった。被害者の妹は、同級生の安曇真生が犯人だと言う。週刊誌記者の森脇が訪ねると、真生は自分が常に帯電しているカミナリ体質であること、被害者の少年の、姉に対する暴言に我慢できなくなったことを証言した。森脇は真生に、飛島を紹介する。

聖なる子
 ネットで話題の「治癒力」を発揮する少女・柳瀬綾。彼女を加えて、飛島は不思議な能力を持つ6人の子供たちと合宿を計画する。八ヶ岳のロッジで豪雨の中、遙香は二人の女性の事故を予知し、飛島たちは二人を救おうと奔走する。…


 不思議な能力を持つ故に虐げられた少年少女たちが、理解者を得て自分に自信を持ち、人助けまでする。人の役に立てる、ってのはやっぱり嬉しいでしょうね。
 気味悪がる周囲の人の気持ちも分かりますが(特に虫愛ずる女の子は、やっぱり傍にいるとちょっとイヤだなぁ。ゴキブリとかもくるんですよねぇ??)、何より苦しんでいるのは本人たち。自分だけに聞こえる声に苦悩したり、常にアースをひきずって生活しなきゃいけなかったり、そりゃ大変だわ。治癒力を持つ少女には、「ちょっと私も治して貰いたい所が…」と半ば本気で思いましたよ。
 するする読めて面白かったです。でも≪チョーズン6≫というネーミングには、ちょっと首を傾げてしまいました。…もっと響きのいいのはなかったかなぁ。