読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

六花落落(りっかふるふる) 西條奈加著 祥伝社 2014年

 何故、雪は、六花の形を成すのでしょうか。

 万象の理が識りたいと願った古河藩の下士・小松尚七。
 政のために蘭学を究めた重臣・鷹見泉石。
 冬の日に出会った二人は幕末へ向かう時代に何を見たのか?

 何と言われようと考えることをやめようとしない。それは何よりも貴いことだ――。

 冬の日、雪の結晶の形を調べていた下総古河藩の下士・小松尚七は藩の重臣・鷹見忠常(のちの泉石)に出会う。その探究心のせいで「何故なに尚七」と揶揄され、屈託を抱える尚七だったが、蘭学に造詣の深い忠常はこれを是とし、藩の世継ぎ・土井利位の御学問相手に抜擢した。
 やがて江戸に出た主従は、蘭医・大槻玄沢や大黒屋光太夫、オランダ人医師・シーボルトらと交流するうちに、大きな時代の流れに呑み込まれていく…。                      (帯文より)


 あとがきによると、作者が興味を持ったのは鷹見忠常だったようで。
 この時代の知識人の、交流関係の広さというか狭さと言うか…。蘭学との関わりでこんなにもビッグネームが次々飛び出してくるとは。奥さんの父親がオランダ語通詞、ということもあったのでしょうが、シーボルト渡辺崋山大塩平八郎、歴史の教科書に出て来るような人がばんばん登場してきました。
 元が貧乏下士だっただけに、どうしても庶民側に立った見方をしてしまう尚七。度重なる凶作、飢饉に心を痛め、武士の無駄にしか思えない贅沢に眉を顰める。でも自分が究めたい学問も、言ってしまえば余裕というか無駄の上にしかできないことで、忠常にそれを指摘され、またそれを利用して窮状を救う忠常のやり方にも、成程、頭のいい人だなぁと思いました。
 大塩平八郎の乱にしても、詳しく知っている訳ではないのですが、庶民の正義の味方という見方ではない、為政者から見たらこんな風に映るんだな、というのも新鮮でしたし。
 世界史ではこのあたりでフランス革命だったのね~。オランダが一度無くなってる、という記述に「へぇ~」(←こらこら;)。いやいや、お恥ずかしい限りです。