読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

竜鏡の占人 ―リオランの鏡―  乾石智子著 角川書店 2014年

 ネタばれになってるかも、すみません;

 北に茫々たる草原、東西と南に荒野と砂漠と峨々たる山並み、その山々から流れ入る大いなるティラン湖のほとりに、リオランというオアシス都市が栄えていた。
 <獅子星王朝>の第二妃カトラッカは、<鏡法>の占人である。鏡をのぞきこむことによって、過去や遠方の出来事を見ることのできる彼女は、誰からも慕われていた。しかし、歪んだ価値観によってときに無造作に人を傷つけ、支配下に置き、これを是としていた。その腹心エスクリダオは素性も知れぬ男。しかし奸智と機智に富んだ彼は、カトラッカの享楽を満たすために、己の破壊欲を埋めんがために、その手を三人の王子に伸ばした。
 世間知らずのアラバス、ジャフル、ネオクを言葉巧みにおだてあげ、酔っ払った三人を船に放り込んで<竜鏡>探索の旅に出す。この世で過去、現在のみならず未来が映るのは<竜鏡>のみ、カトラッカは三人の破滅が目的だったがエスクリダオはあわよくば<竜鏡>も手に入れたいと、三人の従者をそれぞれにつけた。だが享楽に弱いネオクは早々に脱落、ジャフルの妹ジャフナと奴隷書記のガドロウをひきずり込んで勝手に船を出してしまう。
 ネオクを追って陸路を旅するアラバスとジャフル、あちこちの都市に寄るがあと一歩でネオクに追いつけない。遺跡でアラバスは過去の亡霊に取り憑かれ、何度も生まれ代わっては自分と自分の愛する者が殺された幻影を見せつけられながらも、護衛のナナイ・バンダクの導きもあって、徐々に賢く逞しくなって行く。決定的だったのは、美女につられた結果、奴隷として銀鉱山に売られてしまったこと。ガドロウとの再会を経て、アラバスもジャフルも大きく成長する。
 一方、エスクリダオはその後もカトラッカの退屈しのぎに、東方の央美人や南方の騎馬民族ノイウルンを相争わせ、疫病を流行らせ、そのついでに竜鏡の現在の在り処も見てしまう。それはすっかり怠惰な生活に身を浸したネオクの元にあった。
 一同に会したアラバス、ジャフルとカトラッカ、エスクリダオ。亡霊の過去を追体験したアラバスは、竜鏡とカトラッカ、エスクリダオとの間との関係に気付いてしまう。それはカトラッカ自身も自覚していない因縁だった。…
                                  (前半、表紙見返しの紹介文を参考にしました)



 …カドカワ、乾石さんに目をつけたようで(笑)。
 角川らしく(?)表紙が派手。…これはなぁ、ちょっとイメージ違うなぁ。こういうイラストが似合う作家さんではないと思うんですが、角川の装丁はどうも私の感覚とはずれるなぁ。
 今回はアラビア風の世界。三人の王子といいながらも兄弟ではない、という設定に最初ちょっと戸惑いました。アラビア世界ということは同族支配なのか、親族なら王位継承者ということで「王子」なんだな、ということを理解するのに時間がかかりまして。おまけにアラバスが主役と分かるまで三人の特徴を掴むのにも時間がかかりました。…最初に登場人物の紹介を入れて欲しかった;;
 とは言いながら、把握してからはするすると進みました。
 過去を追体験して現在と繋がる構成は相変わらず、今回はエスクリダオが暗躍する戦記物として読める一面もあり面白かったです。途中で「あ、この二人は…」と気付いてしまうんですが、それも織り込み済みなんでしょうね。
 なんだか立て続けに新刊が出てるのが気になるところ。好きな作家さんが世間に認められているのは嬉しいんですが、ゆっくりじっくり、丁寧な作品を書いてくれたらいいのになぁ。