読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

火怨 北の燿星アテルイ 上 高橋克彦著 講談社 1999年

 吉川英治文学賞受賞作。

 辺境と蔑まれ、それゆえに朝廷の興味から遠ざけられ、平和に暮らしていた陸奥の民。8世紀、黄金を求めて支配せんとする朝廷の横暴に、初め恭順の意を示していた鮮麻呂(あざまろ)が反旗を翻した。その間の囮の役を任されたのが胆沢の長・阿久斗の息子、18歳の阿弖流為(あてるい)。阿弖流為多賀城の兵士を誘い出している間に鮮麻呂は陸奥按察使・紀広純と道嶋大楯らの首を掻っ切り、朝廷と蝦夷の長い闘いが始まることになる。
 阿弖流為は部下に飛良手(ひらて)、軍師に母礼(もれ)、片腕に伊佐西古(いさしこ)を配し、鮮麻呂亡きあとゲリラ戦で対抗していた取実(とりみ)を加え、朝廷軍が来て以来鍛冶を諦めていた延手(えんで)を仲間に迎えて、朝廷から追われて東北に居を移した物部天鈴を後ろ盾に、攻め込んで来る朝廷軍を追い払って行く。
 多賀城焼き討ちの後に攻めてきた二万五千の兵を、山中で分断して倒し、糧食を焼き払う。川を遡上して来た別動隊を説得して引き返させる。
 七年後、朝廷軍の五万二千の兵を川を挟んで布陣させ、渡って来た敵を誘い込む。上流から材木を流して筏自体を潰し、多量の兵を川に流して薙ぎ払う。
 阿弖流為たちの快挙は、とうとう坂上田村麻呂を呼び出すことになった。…


 私に戦記物の面白さを教えてくれたのは田中芳樹さん、伝奇小説の楽しさを教えてくれたのは高橋克彦さんです。『総門谷』に始まって一時期夢中で読み漁りました。『刻迷宮』『バンドネオンの豹』『星封陣』、ピリ・レイスの地図だのキリストの墓だのヘブライ語に通じる民謡だの、妙な知識ばかりが増えて行く中、『竜の柩』『新・竜の柩』で「これが集大成だろう」とばかりにとどめを刺されて、で、何だか気持ちが昇華してしまい、以来あまり手を出していませんでした。高橋さんの歴史物の評価は噂で聞いていたものの、「…長いよなぁ」と尻込みしていました。今回、予約本がなかなか回って来ない状況に、久々、長いものを読んでみるか、と言う気になってえいや、っと借りてみました。
 日本史の教科書でちらっと出てきただけの「坂上田村麻呂蝦夷征伐」に、これだけのドラマがあったのか。朝廷側が嘗めてかかっていた、ということもあったんでしょうが、阿弖流為、連戦連勝です。でもいずれこれ、負けるんだよなぁ??
 …それにしても、やっぱり時間かかった(笑)。下巻も時間かかりそうです(苦笑;)。