読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

上野池之端 鱗や繁盛記 西條奈加著 新潮社 2014年

 連作短編集。…になるのかな。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 上野池之端にある「鱗や」は、料理茶屋とは名ばかり、連れ込み宿と化している。主人の宗兵衛は女遊びにうつつを抜かし、内儀のお日出や一人娘のお鶴は芝居見物や物見遊山に夢中になっている状態、奉公人もやる気のない怠け者ばかり。
 十四になるお末は、そんな鱗やに郷里から奉公にやってきた。良縁を得てやめた従姉のお軽の代わり、という振れ込みだったが、実際店で話を聞くと、お軽は店のお金をちょろまかした上で、駆け落ちして行方不明になっているらしい。
 従姉の素行のせいで、お末まで客の煙草入れを盗んだ、と疑いをかけられる羽目に陥る。そんなお末を信じ、庇ってくれたのがお鶴の入り婿の若旦那 八十八朗。八十八朗は鱗やを、開店当時のように料理で勝負する立派な店にしたいと思っていた。
 女中たちを浅草今戸の料亭「桜楼」の女将のもとに遣り、行儀のいろはを教え込む。建具を入れ替え、女中たちの着物を新しく誂える。食通で名高い人気歌舞伎役者・小村伴之介をもてなし、店の評判を上げる。噂を聞きつけてやってきた昔の客のため、板長の軍平に鰻茶碗の復活を説得し、鮟鱇の雑煮を考案させる。「鱗や」は見違えるように、以前の活気を取り戻して行く。
 いつも菩薩のように優しい八十八朗だが、主人夫婦やその娘である妻に向ける視線には、どこか冷ややかな所がある。やがて、「鱗や」で幽霊騒ぎが起きた。庭先に立つざんばら髪の女を見て、主人夫婦は先代の女将お都与だと恐れ、娘はお軽だと取り乱す。その怯え方に、お末は「鱗や」の主人一家を不審に思う。これを機に、と「鱗や」の建て直しを切り出した八十八朗にも。…


 美味しいもの、って言ったらやっぱり引きが強いよなぁ。蛤鍋、鰻茶碗、鮟鱇雑煮、桜飯、どれも美味しそうで。
 面白かったです。一気に読みました。
 ただ、もうちょっと、鱗やがよくなっていくさまを見ていたかったかなぁ。後半、復讐譚に流れ込んだ分「せっかく『鱗や繁盛記』なのに…」とちょっと惜しく思ってしまったのも確か。それはそれで面白かったんですけどね。
 若旦那が帰って来て、またこの話は続くんでしょうか。このまま終わってほしいような、続いて欲しいような、複雑な気分です。