読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

通り雨は〈世界〉をまたいで旅をする 沢村凛著 角川書店 2014年

 ネタばれになってるかも、すみません;

 広い世界を、己の足だけをもって渡る小さな<わたし>。その<わたし>だけが果たせる任務がある――。世界を変える、“それ"は死神か福音か。優しくて残酷な、世界の決まりとは?
                                        (出版社HPより)

 世界をへだてるドアが開いた。わたしは大きく息を吸うと、ゆっくりと吐き出しながら、足を前に踏み出した。〈この世界〉で、わたしだけが果たせる仕事をするために――。
 通り雨に降られたわたしを、照る照る坊主が迎えてくれた。とても皮肉だ。この世界では、排除されるべき〈アメ〉はわたしを指すのだから。
 今回の仕事相手は、三世代で牧歌的な暮らしを営んでいる。昔気質のおじいさんに、とても温かい夫婦、かわいい子どもたち。変わらない日常を送ってきたのだろう。しかし、わたしは否応なく彼らの〈世界〉を変える。彼らに取にとって、わたしは死神だろうか、福音だろうか?
 優しくて残酷な世界の決まりを胸に秘し、わたしは彼らと短い共同生活を始める。
                                   (表紙折り返しの紹介文より)

 秘めた過去をリメイクされた『人魚姫』の童話に重ねるフクジュ、フクジュを迎えに来たのではないかと怯えるエンレイ、ミスミは相手を丁寧にもてなし、セージは別世界の情報を得ようと試み、ナズナは客人を初恋の相手とする。そして末っ子のハランは、ただただ客人を死神として見てしまう。
 閉じられたような不思議な世界の謎、客人の役割は最後に明かされます。このシステムで本当に上手くいくのかなぁ、という疑問はどうしても持ってしまいますねぇ。選んだ世界から一定年数経たないと移動できない、たとえ身内の不幸があっても、というのは、何だか不自然なような。
 でも世界としては、同時出版された『ぼくは<眠りの町>から旅に出た』より好きかも。