読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

忘れ村のイェンと深海の犬 冴崎伸著 新潮社 2013年

 第25回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞受賞作。

 辺境の貧しい村・ホローで生まれ育ったお転婆娘イェン・サクリ。日照時間の短い、茸しか特産がない田舎の村の海磯で、ある日、イェンは犬によく似た瀕死の生き物を拾う。ぬいぐるみのように愛らしい容姿に夢中になって「シェール」と名付け命を助けるが、周囲の者はいい顔をしない。シェールは実は、恐ろしい怪物 族獣の子供だった。
 イェンに懐き、怪物が跋扈する森の中に何度捨てても戻って来るシェール。恐れ慄いた村人たちはイェンの一家を襲い、殺そうとする。それを救ったのは怒ったシェールの圧倒的な力だったが、村八分になったイェンたちの立場は変わらない。その上、シェールの吠え声は村に親を呼んだ。
 巨大な母親はシェールを連れて行くことはなく、しかし見守るように村の傍を離れない。いつ襲ってくるか判らない奇妙な行動とその恐怖に、イェンは首都ウンディスに助けを求めに行くことを思いつく。伝手は、一度浜で出会った漁師のハイタカのみ、しかしハイタカは王子シュリと親友だとか。イェンは二人の友人と共に首都に向かい、見事シュリ王子と軍勢を連れて戻った。
 そして、後々ガロキン国に長く語り継がれることになる、族獣との決戦が始まる。…


 ファンタジーにどれだけこの世界のものを持ちこむか、ってのは難しいねぇ。
 …とこの手の作品を読むたびに思ってしまいます。物語の始まりの場となるホロー村は茸の栽培の盛んな土地という設定なんですが、椎茸、舞茸、湿地…と品種名が出て来ると、…ちょっと違和感あるかなぁ。そのくせ、人種、亜人種、族獣が入り交じり月が5つもあるような世界の話なんですよね。
 と言う訳で、世界観を掴むのにちょっと時間がかかりましたが、面白かったです。シェール可愛かったし(←え、そこ?・笑)。私の頭の中では、シェールの造型まるで六本足のスピッツマルチーズでしたもの…いや、耳垂れてるんだっけ。予測でしかないとはいえ、シェールたちの行動の理由には納得しましたし。悪い所しかないようなホロー村に、何故人々が住んでいるのかの説明には、成程と思いました。
 族獣ってのは、下手すると人間より知恵があるようで。これ、作者続き書く気あるのかなぁ。イェン、まだ英雄までにはなってない気がするもんなぁ。