読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

冬虫夏草 梨木香歩著 新潮社 2013年

 『家守奇譚』続編。

 疏水に近い亡友・高堂の生家の守りを託されている、駆け出しもの書きの綿貫征四郎。行方知れずになって半年あまりが経つ愛犬ゴローの目撃情報に加え、イワナの夫婦者が営むという宿屋に泊まってみたい誘惑に勝てず、家も原稿もほっぽり出して分け入った秋色いや増す鈴鹿の山襞深くで、綿貫がしみじみと瞠目させられたもの。それは、自然の猛威に抗いはせぬが心の背筋はすっくと伸ばし、冬なら冬を、夏なら夏を生きぬこうとする真摯な姿だった。人びとも、人間にあらざる者たちも…。
 『家守綺譚』の主人公にして新米精神労働者たる綿貫征四郎が、鈴鹿山中で繰り広げる心の冒険の旅。                                           (帯文より)
                                       
 イワナの夫婦の経営する宿屋がイワナ料理を提供するか?? という疑問が第一(笑)。でも確かに、メダカや金魚も自分たちの卵や幼魚を食べちゃったりするもんね、食卓にも並べるかも。とか言いながら、実際はキジ鍋だった訳ですが。
 いや、相変わらず品のあるしみじみした文章。しかも妙にユーモラス。河童や天狗、狸がちょこちょこと顔を出し、過去の想いや人で亡くなって間のないもののまで出会う旅。赤竜まで出て来ましたもんね。
 ゴローの特徴を話しているうちに熱を帯び、人格(?)にまで言及するに及んで、相手のお爺さんから ――それは、犬どすな。 と念押しされたくだりには、思わず吹き出しました。
 むかご飯やら蒟蒻やら蕎麦やら、美味しそうなものも満載。でもここいらの土地は、いずれダムの底になってしまうんでしょうか。河桁とやらのために。
 高堂の存在にしても、やっぱり妙に物哀しい。ゴローとの再会は嬉しかったけれど。