読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ガソリン生活 伊坂幸太郎著 朝日新聞出版 2013年

 ネタばれになってるかも、すみません;

 語り手は、望月家の車 緑のデミオ。二十歳で免許取り立ての長男・良夫と小学生5年生の弟・亨を乗せて仙台市内を走っていたら、いきなり妙齢の女性が乗り込んできた。
 彼女の名前は荒木翠。芸術家を輩出したような地元の名家の出身で、自身も映画女優として活躍した後、十年前一般人の男性と結婚。芸能界から引退したものの、マスコミからはあることないこと書かれている状態。今日も記者に追われて、思わず良夫の車に乗り込んだらしい。
 現在の状況も屈託なく話す翠。指定のDIY用品店の駐車場で彼女を降ろした数時間後、翠死亡の報道が流れる。トンネルの中でパパラッチに追われ、不倫相手と共に事故死したとのこと。良夫と亨がその直前に翠と会っていたと知った週刊誌記者から、二人にインタビューが申し込まれる。記者と話をして、亨には疑問が湧いて来る。翠は本当に事故で死んだのだろうか。
 望月家の長女、高校生のまどかやその彼氏江口さんが巻き込まれた騒動や、亨を取り巻くいじめ問題、ATMをショベルカーで破壊する強盗団。さまざまな事柄がリンクする。事件の真相を見抜いたのは亨だった。…


 ラスト、泣きそうになってしまいました。本文の中にちょいちょい出て来ていた切なさ、いつまで一緒にいられるんだろうという不安感。それがこんな形で再会できるなんて、緑デミ、よかったねぇ。
 何かね、メタリックミントグリーンの愛車を大切に乗り回している友人に薦めたくなりました。車がこんなにもご主人一家を愛してくれてるなんて。(←いや、本気にするなよ)
 いや、面白かったです。何かもう、理屈抜きに楽しめた感じ。伊坂さんの作品だから、隅々のエピソードまで覚えておかなくちゃ、と思いながら読んだのですが、まさしくそれが繋がって行く爽快感。で、それを語る車たちが身びいきも激しくとにかく可愛らしい。
 人間は二つのことを同時にできない。いや、正確に言えば、二つのことを同時にはできるけれど、二つのことを同時にやると、三つ目に出現した不意の出来事に対応できない、ってのは成程、と納得しましたし。
 表紙もいいんですよね、小さい丸っこい車が沢山積み重なって、自転車もあって、端っこには高山植物、折り返しには帽子とカラス、それに野球のボール。ちゃんと愛して貰ってる装丁で。
 何か、最後まで幸せでしたよ。よかったなぁ。