読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

雪と珊瑚と 梨木香歩著 角川書店 2012年

 ネタばれになってるかも、すみません;


 母でも娘でもない、自分が今、ここにいる――。

 21歳の珊瑚は、赤ん坊の雪を抱えて途方に暮れていた。母ひとり子ひとり。働きたいけれど保育園も託児所も満員で、だけどお金も必要で――。そんなとき、珊瑚はくららさんに出会う。くららさんは「赤ちゃん、お預かりします。」の張り紙の主で、不思議に魅力的な年配の女性だった。くららさんのもとに通ううち、何時しか珊瑚は、人の生活を支える惣菜カフェを開きたいと思うようになる。
 この世界には、成分表には載らない栄養素がある。人との適切な距離感とは、自分のプライドとの折り合いのつけ方とは。
 心身をはぐくむ物語。
                           (『雪と珊瑚と』応援フリーペーパーの紹介文に少し付け足ししました)


 久しぶり、梨木さんの描く「母と娘」、「母からの解放」。でもそれだけではなく。
 読み始め、不思議な感覚を味わっていました。19歳でできちゃった婚をして、20歳で子供を産んで、1年経たないうちに離婚した珊瑚の状況と言うのは、客観的に見てあまり感心できるものではなく。ぐんぐん読みながらも、「まぁ、ちょっと計画性がないんじゃございませんこと?」とこっそり思う自分がいまして。でも珊瑚自身の性格は軽薄、軽率には描かれない。これも主人公のマジック(主人公には何だかかっこよく見える魔法が掛かっているということ ©氷室冴子)の為せる技かなぁ、と漠然と思っていたら、終盤に作者自身から答えが来ました。美知恵からの手紙です。
 実際珊瑚のような人がいたら、私はどうするか。私の感情は美知恵さんのように「嫌い」まではいかないだろう。勿論裏で足を引っ張ることもしません、職場なりなんなりでは、気持ちよく働きたいから。ただ、パン屋のオーナー夫人・雅美さんやバイト仲間の由岐さんのように、親身には接せないだろう。どうしても「自業自得じゃん」と思う所があるから。そして、他の人のように「いい人」に振舞えない自分に自責の念を抱くかも。今なら距離を置いて付き合うことも「それも自分」と開き直れますが、若い頃ならなおさら。で、その矛先が、相手に向かうこともあるかもなぁ。美知恵さんのように、あそこまでの分析力はないけれど。
 味覚は小さい頃に鍛えておかないと、みたいなことを聞いたことがあったので、珊瑚が総菜カフェを開いて大丈夫なのかしら、という疑問もちょっとありつつ。くららさんのお仕込みがよかったということで。
 ラストの雪に、友人の姪っ子ちゃんのエピソードを思い出しました。小さい頃からお祖父ちゃん、お祖母ちゃんやオバさん連中に囲まれて育った姪っ子ちゃんは、湯のみのお茶を飲み干して、「ぶはぁ、飲んでしまいましたわぁ!」と叫んだそうで。
 愛情というのは、こんなささやかな所からもこぼれ出ているようです。