読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

トロイメライ 唄う都は雨のち晴れ 池上永一著 角川書店 2011年

 『トロイメライ』続編、幕末の琉球を舞台にした連作短編集。

 第一夜 間切倒
 日照り続きであちらこちらの村が間切倒になっている。小禄間切の財政再建役として王府から送り込まれて来たのは伊舎堂里之子親雲上、あまりにも過酷な再建策に村人たちは悲鳴を上げるが伊舎堂は見向きもしない。雨乞いすら馬鹿にして禁止するやり方に、ノロはたまりかねて伊舎堂の家に放火し、筑佐事の武太の出番となる。訴えを聞いたノロ直属の上司・聞得大君加那志が動く。

   …最初から聞得大君加那志が雨乞いしてたらよかったんじゃん、とか言ったら駄目なんだろうなぁ(苦笑;)。

 第二夜 職人の意地
 王宮に献上するための菓子器と菓子のコンテストが開催されることになった。をなり宿の三姉妹も大張り切り、長女の鍋は松金師匠と組んで甑菓子を堆錦細工の東道盆(トゥンダーブン)に乗せて、次女の竃は松金の弟子の思嘉留銘と組んで焼き菓子を螺鈿細工との組み合わせで勝負することを決意。下ごしらえに追い回される三女甕と新入りの思亀は自分の時間も材料も無い中、二人で励まし合って作品を出展する。

 第三夜 雨後の子守唄
 をなり宿の三姉妹が雨の夜、女にウフスーコーを騙し取られた。ウフスーコーは三十三年忌の法要で出される盛大な重箱膳、三姉妹は武太に訴えを出す。三日後の雨の夜、またしても女が現れた。悪びれもせず同じ御膳を注文する様子に武太は疑問を抱く。果たして、重箱を受け取った女は武太の目の前で消えてしまう。どうやら女には、幽霊になってまで御膳を渡したい相手がいるらしい。

 第四夜 那覇ヌ市
 どうやら清国から輸入した蛇皮が横流しされているらしい。那覇の市を調べていた武太は、下級士族で商売を営んでいる湖城筑登之に目を付ける。ところが後見人の牧志按司の横やりもあって、捜査は打ち切りになってしまった。悔しがる武太の目の前に現れたのは黒マンサージ、彼は牧志按司の裏帳簿を奪って孫親雲上の前に現れた。

 第五夜 琉球の風水師
 新しく拓かれた村・比嘉盛村の風水を鑑定した神山里之子親雲上は、元々この村を鑑定した風水師が清国の作法をそのまま琉球に持ち込んだだけだと、改良点を次々に上げていく。しかしその素性に疑いを持った一人の村人が、筑佐事に訴えを出した。武太は風水師の村・久米村の林学石を連れて、神山が本物の風水師か鑑定にかかる。

 第六夜 芭蕉布に織られた恋
 真境名親雲上は国王の夏の着物のための芭蕉布を探していた。那覇の反物屋のオバァから、末吉の森に一人で住み、極上の八重山上布を材料作りから染織、機織りまで全てこなしている女の噂を聞いた真境名は、彼女を訪ねて原生林の中を歩いて行く。やがて二人は身分違いの恋に落ちるが、女は故郷の村に連れ戻されてしまう運命を持っていた。…

 
 琉球の過酷な環境や庶民の哀しい状況が描かれているのに、何なんでしょう、あくまで陽性。どうしてこんなに後味いいんだろう。
 面白かったです。一巻目よりまとまってる感じで、こっちの方が好きかも。
 もうほとんどファンタジーの世界、知らない風習だの催事だの教えて貰う感覚で凄く楽しい。風水師が迷信めいたものだった訳ではなく科学的な根拠に基づいたものだったりとか言うくだりは本当、目から鱗でした。職人さんの蘊蓄も楽しかったなぁ、勿論三姉妹の作る郷土料理も美味しそうで(←え、そこ?・笑)
 黒マンサージは孫親雲上の秘密を知っている様子、勿論孫寧温も黒マンサージが誰か判っているようです。…てことは『テンペスト』にも出て来た人物なのかしら?? 誰だっけ、それらしい人いたっけなぁ;;