読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

瞬間移動死体 西澤保彦著 講談社ノベルス 1997年

 「俺」中島和義は妻・景子を殺すことにした。景子は売れっ子の小説家、彼女のおかげで怠け者の俺は左団扇で暮らしていけるが、精神的に追い詰められてしまった。
 俺は、ロスの別荘<うぐいす荘>に秘書兼愛人の波多野と共にいる景子を殺す計画を立てる。アリバイトリックの肝になるのは俺の特殊能力、テレポーテーション。但し色々制約が多く、アルコールを摂取しないとその現象は起きないのに、裸一貫でしか移動できない上、移動先にある何かが代わりにこちらに来てしまう。日本の自宅マンションの隣の空き室からロスへ飛んだ俺は、別荘の女性用客室のクローゼットの中へ移動、そこで波多野ともう一人の女性秘書・菱科がいちゃついているのを見て驚き、とっさに空き室へ戻ってしまう。そこにあった血痕に疑問を持っていたら、やがて景子から国際電話が掛かってきた。曰く、ロスの女性用客室のクローゼットから、全裸の金髪碧眼男の死体が転がり出て来たのだとか。胸にはナイフが突き立った状態で。
 この男はきっと、自分と入れ替わりにロスと日本を往復したに違いない。ではこの男は何者で、誰が殺したのか。ロスの警察の捜査で、男はアメリカの大学生で、日米間で麻薬の密売に手を染めていたらしいことが分かった。それなら<うぐいす荘>にいたのは偶然でこそ泥目的だったのか。景子の妹・玲奈が何故か俺に協力を申し出てくれた。日本に戻ってくる景子と波多野と入れ代りに、俺は彼女と共にもう一度、事件を調査しようとロスに飛ぶ。だが結局徒労に終わった上、アルコールの在庫が切れて、おれは一人ロスに取り残されてしまった。
 謎のアメリカ人を殺したのは誰なのか、そのトリックは。素っ裸で別荘に取り残されたおれは、漸く真相に思い当る。…

 参考文献はラリィ・ニーヴンのSF短編小説だそうで。
 この作家さん、凄いなぁ。どのお話読んでもトリックと結びつけて考える癖がついてるんだなぁ(笑)。
 途中からは誰が犯人か推測しながら読むとかいう行為はやめて、もうがむしゃらに読み進めてしまいました。何しろ設定がそこそこややこしかったんでねぇ(苦笑;)。
 元々の前提がまぁありえないんですが、それを利用したにしてもちょっと偶然に頼ってるかな、という展開、かも。真相には納得はしたんですけどね。
 作家志望の主人公への景子の台詞「読み終わった時に、だから何、と読者に開き直る余裕を与えないのが、ほんとに面白い小説」にはおお、と思いました。「だから何」って読者は言っていいのね(笑)。
 いや~、それにしてもどの人物にも感情移入できない、相変わらず(笑)。