読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

クロノスの飛翔 中村弦著 祥伝社 2011年

 中村弦、三作目。
 少々ネタばれしているかも、すみません;

 昭和36年。中国大陸で日本軍の軍鳩係だった坪井永史は復員後、明和新聞の記者になった。安保闘争で社会全体が揺れる中、坪井はある日、学生運動家の女子大生・山岸葉子から特ダネが持ち込まれる。どうやら川俣飛行場に、米軍の核弾頭が持ち込まれているらしい。安保条約に違反するこの情報の裏を取るため川俣飛行場に向かった坪井は、そこで維新決死隊と名乗るテロリスト集団に捕まり、旧日本軍の要塞の一つだった白壁島に監禁されてしまう。見張りの隙を見て何とか逃げ出した坪井は、たまたま訓練のため連れ出していた伝書鳩・クロノスに経緯を記した手紙を付けて飛ばす。
 50年後の平成23年。明和新聞で書類整理のアルバイトをしていた溝口俊太は、旧館の屋上に一羽の鳩が降り立つのを見る。元伝書鳩係の清掃員と共に、時を越えた通信文を読む俊太。手紙の内容に困惑しながらも、俊太は島の場所やテロリスト集団の正体について、分かる限りの情報を書いてクロノスを送り返す。丁度現代では、白壁島で日本軍の要塞跡と白骨死体が見つかった所だった。
 クロノスは再び坪井の元に戻った。その情報を元に坪井は、島から逃げ出す算段を立てる。維新決死隊が米軍から奪った核爆弾で永田町を破壊するつもりでいると言う計画を知り、それを外部に知らせようと島からの脱出に奔走する。…

 あれ、こんな文章書く作家さんだったっけ?と思いつつ。
 何か今までとイメージ違いましたね。こういう陰謀アクションものよりも、今までの路線の方が似合ってるんじゃないかしら。
 どうしても先が読めてしまうのが残念。前半出て来る謎の人物がきっとそうなんだろうな、とかこの遺跡が関係して来るんだろうな、とか察しがついてしまうんですよね。もうこれは『バック トゥ ザ フューチャー』だ、と分かった段階で仕方ないんですが。
 個人的に、伝書鳩で思い出すのは漫画『レース鳩0777(アラシ)』や、シートン動物記の『伝書鳩ルノー』。どちらも泣いたな~。今から思うと、「優秀な伝書鳩」って鳩自身にとっては幸せでも何でもないのかも、とかちょっと思ってしまいます。何しろ人間の都合ですから。でもやっぱりアルノーの「家へ、家へ!」は切なかったです。今回のクロノスも健気だったなぁ。