読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

もし高校野球の女子マネージャーがドラッガーの『マネジメント』を読んだら 岩崎夏海著 ダイヤモンド社 2009年

 企業経営の本、ドラッガーの『マネジメント』を実践して、とある公立高校の野球部が甲子園出場を果たすまで。
 ネタばれあります、すみません;

 川島みなみは高校二年生。野球部のマネージャーをしている親友・宮田夕紀が病気で入院して部活ができなくなったため、代わりに野球部に入った。目標は「甲子園出場」、でも誰も本気にはしない。みなみの通う都立程久保高校、通称程高は20年前の地区予選でベスト16、というのが最高記録という学校だったから。
 そもそもマネージャーとは何ぞや。参考にと本屋で手に取ったのがドラッガーの『マネジメント』。勘違いで買った経営学の本が、みなみの眼を開かせた。みなみは企業経営を野球部の運営に落とし込んで行く。
 野球部の顧客は誰か、顧客のニーズは。それを満たす野球部の定義は。みなみは夕紀に依頼して部員一人一人のマーケティングを行う。夕紀に、お見舞いに来た部員たちの話を聞いて貰い、それぞれの本音を聞き出して行く。キャプテンの星出純は、プレイだけに集中したいのにキャプテンという役目を背負わされた負担を、外野手の朽木文明は守備も打撃も今イチなのに足が速いだけでレギュラーに選ばれている後ろめたさを、補欠の二階正義は起業家になる夢を叶えるため、この先有利と思われる運動部にとりあえず入りたかったという本音を、一年生の桜井祐之助からは、小さい頃から何の疑問もなくやっていた「野球」というものへの不信感を。エースの浅野慶一郎は、監督・加地誠への不満をぶちまける。
 監督の加地に部員の思いを伝えたものの、加地は色々理由をつけて動こうとしない。だが秋季大会、祐之助のエラーを切っ掛けにコントロールを崩した浅野に対して、部員の誰もが冷たい目で見る中、浅野を庇い、心中を代弁したのは加地だった。
 野球部にやる気が出て来た。みなみはやっていて楽しくなるような練習メニューを作るよう監督に提案、一年生マネージャーと共にグループに分けての競争や得意分野の教え合いなど実践する。また高校野球そのものを革新するようなイノベーション戦略を、と「送りバント」と「ボール球を打たせる投球術」をしない野球を導き出し、それを実現するための練習方法を考え出すよう、監督と一年後輩のマネージャー北条文乃を焚きつける。
 二階正義の協力も得て、さらに野球部外への「社会貢献」が広がる。陸上部、家庭科部、柔道部、吹奏楽部との合同練習、地域の少年野球リーグとの野球教室の開催。客観的に自分を見据えることにより、お互いが成長する好結果を得た。
 新キャプテンに二階を迎え、朽木をレギュラーから外してピンチランナーに起用、エラーを恐れない守備練習。そして夏大会、程高の信じられない快進撃が始まった。
 野球少女だったみなみの過去、夕紀が野球部に入った理由、全てが地区大会決勝戦に重なる。…

 TVで筒井康孝氏が誉めてらっしゃったので、読もうかと思った大ベストセラー。
 でもこれ、やっぱりビジネス書だな。小説になる一歩前、って感じがしました。
 確かに過去のみなみのトラウマや、夕紀が語る小学校の時のみなみのサヨナラヒットの思い出が現在に繋がる辺りは「ほう」と思ったんですが、もしこれが本当に小説なら、練習風景とかもっと詳細に描かなければならない筈。「こうした結果ああなった」という文章だけではなく、それに気付く切っ掛けになったエピソードを具体的に積み重ねるように、とか絶対言われそう(苦笑)。みなみのキャラクターも私には疑問が多くて、「来週までに考えてきてください」の口調には、「…一体何様?? 何故そんなに上から目線??」と眉を顰めたりもしましたし。
 とはいえ、面白かったです。ドラッガーの言葉は私にはかなり難解で、文章をそのまま引用してある箇所は読み飛ばしたりしたし、「明日から実践しよう」とかはまるで思わなかったけれど。
 ビジネス書はやっぱり苦手だなぁ、反感ばっかり湧いてくる(苦笑;)。