読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

狼と香辛料ⅩⅤ 太陽の金貨〈上〉  支倉凍砂著/文倉十イラスト  メディアワークス電撃文庫  2010年

 『狼と香辛料』シリーズ16冊目。最終章突入。
 ばりばりネタばれしてます、すみません;

 ホロの仲間の名を冠す『ミューリ傭兵団』。彼らに会うため、ロレンスとホロはコルと別れて鉱物商・デバウ商会が牛耳るレスコの町を訪れることになる。
 デバウ商会には、北の地の征服を企んでいるとも、さらなる鉱山開発を進めようとしているとも噂があり、そのため商会は町に武力を集めているという。だがロレンスとホロが訪れた町は、意外にも活気に溢れた平和な様子だった。
 訝しがりながらもロレンスたちは、ミューリ傭兵団が滞在する宿屋を目指すことに。そこで出会った若き団長ルワード・ミューリは驚きながらもホロに敬意を払い、代々伝わって来たという首飾りを見せる。一見して牛の骨のようにも見えたそれは、巨大な狼の爪、しかも半分に割ったもの。裏にはいつか出会う同胞への、遺言じみた言葉が刻まれていた。
 哀しむホロを元気づけようと、ロレンスはホロを連れて町へ繰り出す。市壁も組合もなく税金もない、規制のない町に驚くロレンス。鉱山に近いこの町では金貨の価値も低いとかで、金貨を他の町に運んで銀貨に両替すれば、それだけで十分儲けが出るほどのレベル。思わず安易な行商に走りかけたロレンスは、そこで疑問に思い当る。何故この町では貨幣がなくならないのか。そしてロレンスは、売りに出されている無人の店を見つける。
 夢に見た自分の店を持てるかもしれない。だがそれに素直に乗るには、この町はあまりにも謎が多すぎる。傭兵を集めているのに戦が始まる様子はなく、しかも長逗留させている無意味さ。自腹を切ってまでこの町を発展させようとするデバウ商会の目的がロレンスには読めない。
 迷うロレンスの背中をホロが押す。いざ手付金を持って店を訪れ、ロレンスはデバウ商会の目論見に思い当る。死人の出ない、悲劇の生まれない戦の存在に。…

 …実はまだ「新規通貨の発行」がどれほど凄いことなのか、ぴんときてないんですが;
 ラスト近辺、かなりの言葉を尽くして説明してくれてるんですけどね、呑み込み悪くてごめんなさい;
 とはいえ、シリーズ全編通じて、こう言う伏線の張り方(とは違う気もするけれど)もあったんだなぁ、とおお、と思ったのは確か。ロレンスの持っている「お金」というものの価値観を、様々な事柄を通じて色々と膨らませて行く。ホロの、故郷に対する考え方への「いや、こう言う見方もあるんじゃない?」みたいな提案は結構はっきり見えていたんですが、ロレンスへの価値観の提示は気付かなかったなぁ。
 とりあえずハッピーエンドへ向かうかに見えた矢先、二人の前にコルの頭陀袋が投げ出されます。このまま素直にヨイツを訪れて、とは行かないのね~。
 下巻に続きます。