読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

スタバトマーテル 近藤史恵著 中央公論社 1996年

 ネタばれになってるかな、すみません;

 「私」足立りり子は藤城芸大で副手をしている。人並み外れた声楽の才能を持ちながら、極端な上がり症でコンクール等で上手く歌えた試しがない。講師の西邦生とは学生時代から付かず離れず、恋人だったりそうじゃなかったり。別れた原因も歌が歌えなかったことだった。
 学園祭の練習で歌姫の代役を演じていて、りり子は自分を見る男の存在を意識する。銅版画の特別講師・瀧本大地は、大舞台で歌えないりり子の声を、「神様のための声だ」と表現する。あんたの声は神様が自分だけ楽しむために作ったものだと言う彼に、りり子は恋をする。
 つき合い始めて、りり子は大地の一種の異常さに気付く。大地は母親に囚われていた。母親は盲目のイラストレイター・瀧本瑞穂。事故で視力を失った大地に、自分の角膜を差し出したのだとか。代わりに自分の創作活動を全て瑞穂に捧げた大地だったが、りり子と出会って変化が起きる。母親から離れる決意をする。
 入れ替わりのように、りり子には嫌がらせが頻発する。真夜中の無言電話に始まって、テレクラで住所がばらされ見知らぬ男に襲われ、瑞穂からは「りり子をモチーフにした」という作品を見せられ、それでも大地と別れない姿に、瑞穂はとうとう自殺する。
 大地との関係は終わった、と覚悟した。なのにさらに、部屋が荒らされ、飼っていたうさぎが殺された。思わず西に縋りつくりり子。もう一度部屋に戻ると、今度は目薬の中味が硫酸に替えられていた。
 母親の幻影はまだ消えていない。大地とりり子は共に大地の家へ向かう。りり子を傷つけた人物と、大地は決別するために。…

 周り中が「頑張れ」と言う中、かけられる言葉が「神様のための声だ」。…こりゃ惚れちゃうよなぁ(笑)。普通に考えたら、西の方がいい男っぽいんですが。
 推理小説として楽しむものではありませんね、犯人察しついちゃうし。でも面白かった。サスペンスでしたね~。真っ赤な口紅をひく少女趣味じゃない声楽家、ってのはなかなか珍しい気がしたんですが、これは私の偏見かなぁ。声楽してる女の子って、何だかローラアシュレイ的な、花柄とフリルの世界のイメージがあるんですよ(笑)。こんな、大舞台で実力が出せない女の子と言うともっと健気ではかなげで、って造形になりがちなのに、この子妙にふてぶてしくてタフなんだよな~。そりゃあ同情とか買えるタイプじゃないわ。同性からの覚えがめでたくないのもむべなるかな(笑)。
 何か二時間ドラマの題材としてもぴったりな気がしました。濡場もあるし、でも観光がないか(笑)。