読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

狼と香辛料Ⅻ  支倉凍砂著/文倉十イラスト  メディアワークス電撃文庫  2009年

 『狼と香辛料』、シリーズ12冊目。
 ネタばればりばりしてます、すみません;

 ウィンフィール王国を出たロレンスたちは、北の地図が描けるという銀細工師フラン・ヴォネリに会うため、港町ケルーベを再訪する。町の絵画商で待つ一行の前に現れたのは、砂漠の民が持つという褐色の肌をした美しい少女だった。
 地図を描いてくれるよう頼むロレンスたちに対し、フランはある条件を提示する。それは天使が舞い降りたという伝説がある村タウシッグに同行し、その情報を集めること。しかしその村には、他にも魔女が住んでいるという噂もあるのだとか。
 正教と異教、二つの伝説が同時に存在する不思議。水車もない素朴な村の奥、森の中の湖の畔にある小屋に、今でも魔女は住んでいるらしい。ロレンス一行が訪れて、魔女の謎は少し解けた。その徳の高さを利用されることに疲れた修道女カテリーナ・ルッチが、犬を引き連れてこの天使の伝説の地を訪れ、やがて魔女と呼ばれるようになったらしい。彼女をここでも利用したのは貧しい村人たち、領主や教会の徴税から逃れようと、魔女伝説と天使降臨伝説を交互に使い分けていた。
 小屋に居たのは、こときれてすっかり木乃伊化している修道女の遺体。だが残された手記からも、彼女の真面目さ、敬虔さは伝わってくる。村人の善良さも思い、彼女をそっとしたまま天使伝説を検証するフラン。あと少し、と言う所で、領主が兵を引き連れて村へやって来る。魔女も天使が舞い降りた湖も、どちらも潰して水車を作り、その動力を利用して金儲けに走るつもりらしい。
 当然村人の生活も崩される。天使伝説に拘るフランには検証時間も残されない。ロレンスはフランに、カテリーナを聖女だと言ってくれ、と頼まれる。カテリーナが聖女となればその身の回りのものは聖遺物となる。水車での利益どころではない莫大な金銭が動く。畢竟、小屋も湖も救われる。
 聖女の売買に怖気づくロレンス。彼の背を押したのは、共に行動するうちにフランの過去を知ってしまったコルだった。従軍司祭として傭兵を戦場に送り出し、一人生き残ってしまったフラン。彼女が天使伝説に拘る理由も、その傭兵隊長にあると言う。
 押しかけて来た領主、代官、兵士の前でロレンスは修道女カテリーナは列聖手続き中だと主張する。上手く行くかに思われたが、兵士の中にフラン・ヴォネリを知る者がおり、嘘は見抜かれる。小競り合いが起きてフランは刺されてしまった。混乱の中獣の咆哮が鳴り響き、伝説の天使が舞い降りる。…
                                   (カバー見返しの紹介文に後半を付け加えました)

 ホロとロレンス、北の町へ行くための一冊。出だしには懐かしい人も出て来ましたね。
 面白かったです。天使降臨伝説の顛末も納得の行くものでしたし。
 ホロの故郷も怪物と言うより人間によって荒らされている可能性の方が高くなっている中、却って人間の都合を利用して防ぐ、と言う手段はお見事。宗教でも伝説でもなく、金銭で動く世にはなって来ているようですが。
 さて、北の地図は手に入れました。いよいよホロの故郷を目指すのか、まだ寄り道するのか(笑)。
 次巻に続きます。