読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

武士道エイティーン 誉田哲也著 文藝春秋 2009年

 『武士道』シリーズ第三弾。
 ある程度さとり(?)を開いた主人公二人だけではなく、脇役にもスポットを当てたシリーズ三作目。
 ネタばれになってるかな、すみません;

 磯山香織も甲本早苗も高校三年生になった。香織は東松学園女子剣道部のエースとして団体戦でも個人戦でも活躍、後輩の指導にも余念がない。少し前まで無条件に慕ってくれていた二年生の田原美緒が、自分に距離を置いているのが気になるが、原因はまるでわからない。でも剣道としては絶好調、順調に全国大会まで勝ち進み、早苗と対戦できる日を楽しみにしている。
 早苗は強豪・福岡南高校で団体戦のメンバーに選ばれたものの、日舞を基本とした足捌きが仇となり、内側側副靭帯損傷を起こす。痛みをこらえ、全国大会一回戦で香織と最高の試合をする。
 香織は個人戦で因縁の黒岩伶那と対戦。レナが温めていた必殺技・片手引きメンを、前の団体戦で田原が引き出してくれたことが大きく、香織が接戦を勝利した。
 インターハイ後、二人はそれぞれ将来を考え始める。警察官を志していた香織には名門・明応大学からお呼びがかかったし、早苗は剣道を止めようと考えていた。 

 合間に、雑誌モデルをしている早苗の姉・西荻緑子の、年下の彼氏とのほろ苦い恋愛を描いた『バスと歩道橋と留守電メッセージ』
 香織の師匠・桐谷玄明が、血の繋がらない兄や、桐谷家の秘められた過去を語る『兄、桐谷隆明』
 福岡南高校剣道部顧問・吉野正治が、伝説の百道浜決戦に至るまでの、幼馴染との思い出を語る『実録・百道浜決戦』
 後輩・田原美緒が何故磯山香織を避けるようになったのか、早苗を通じての和解を描く『シュハリ!』を収録。…

 一作目が赤、二作目が青、三作目は緑の表紙で、相変わらずの紅白二本の栞紐の装丁が嬉しい。
 今回、名作劇場であった『ロミオの青い空』を思い出しました。私、好きだったんですよ~。いい友人に出会えたら、人はこんなにもお互いに影響を与えて、高めあって成長していけるんだよ、って話で。主人公のロミオはアルフレドから知性を、アルフレドはロミオから人を信じる精神性を貰う訳です。早苗と香織もお互いにないものを認め合って、器が大きくなっていく。レナも加わって百人力です(笑)。
 早苗をお姫様抱っこする香織のかっこいいこと! それで膝が痛かったけど、とかこっそり早苗が思ってて、思わずくすくす笑ってしまう。
 香織とレナの決勝戦なんて、試合前の様子は早苗を掛けての勝負でしたね(笑)。でも始まってしまえばそこは二人のこと、お互い自分自身のために戦います。
 間に挟まれる短編もよかったなぁ。切なくて、時にはユーモラスで、それぞれが微妙にリンクしてて。
 主人公二人それぞれの将来の決め方も、らしくてかっこよくて、とにかく納得しました。本当、読後感爽やか。もしかしたら完結なのかもしれませんが、もう文句なく受け入れます。女の子の成長譚、やっぱりいい!(笑)