読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ちいさなおはなし 新井素子著 集英社 2007年

 新井素子の描くショート・ショート。
 星新一への献辞が最初に載っています。

 第1話 こゆび:人の体の中でどこが一番大切なのか、こゆびさんの疑問から議論がはじまります。
 第2話 くしゃみ:くしゃみはその昔、人間が言葉を得る前のコミュニケーション・ツールでした。ほら、小さな天使さんが鼻から入ろうとしていますよ。
 第3話 ごっとはんど:ぼくのおじいちゃんは名医でした。何故なら透明なクレヨンを持っていたから。
 第4話 おふとん:お布団さんには仕事があります。“人を眠らせること”“眠っている人を守ること”“幸せな夢を見させて、自分の上で眠る人を幸せにすること”。でもそのお布団さんのご主人は、夢も見ずぐっすり眠ることがご所望で…。
 第5話 ねこまた:老夫婦が飼っている猫は老衰で、獣医で透析をして漸く生きている状態。やがてその家の主人が余命3カ月を宣告される。
 第6話 かげ:真実の闇の中、植物たちが動き出す。
 第7話 ゆめ:夢屋は思い出を報酬に、夢を見せる。
 第8話 いぬ:世界が“人間界”だの“精霊界”だのに分かれる前。犬の子がくるくる変わる宛先に、箱を届けようとしています。
 第9話 かあてん:俺の目の前でカーテンが閉められた音がする。義父に虐待を受けた時の母親から、学校で苛めを受けた時の教師から、職場で他人の失敗の責任を取らされた時にも、そして気が付く。彼女に対する自分の態度もカーテンが閉まっていたことに。
 第10話 ふしぎ:世の中の色々な不思議は、実は妖精が起こしているのです。びっくりしている人間に、こっそりしていたその恩返しは、科学の発達で随分しにくくなっています。
 第11話 ひみつ:ご神木の根元に子供たちが埋めたものは…。
 第12話 くものいと:小さい頃おばあちゃんから聞いた「くものいと」を「雲の糸」と思った博士。大きくなって、雲から実際に糸が取れないものか、博士は発明に励みます。
 第13話 おと:世界の最初の音は、最初の雨の音が地面に落ちた“とん”って音です。
 第14話 たまご:蟻にした意地悪の代償として、まゆこは蟻から“優しさ”の卵を貰います。まゆこの気持ちに従って卵は大きくなったり小さくなったり。でもそのうちまゆこは怖くなって来ます。
 第15話 のっく:人生の節目節目、庭の楠のそばにおばあさんを見る「私」。恋人に想いを打ち明ける時、子供が高校生になって同級生を身籠らせた時、そして終焉の時。そして私は、おばあさんが誰か気付くのです。…

 可愛らしいだけではない、少々黒さも入ったショートショート集。相変わらず独特な文章で、新井さんの本を読むと、普段自分が考えていることもこの文章で出てきてしまいます。影響力大きいなぁ(苦笑;)。
 あとがきの星新一さんへの言葉が胸に響く一冊でした。