読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

俺たちの宝島 渡辺球著 講談社 2006年

 渡辺球デビュー2作目。
 連作中編三本収録。ネタばれになってるかもなぁ、すみません;

 俺たちの宝島
 鉄夫はゴミの島の中、04年式デボネア・ワゴンの中に住んでいる。不法投棄されたゴミの中から目ぼしい物、いわゆる「お宝」を掘り出して買付人に渡し、食べ物や酒や生活必需品と物々交換することで生きている。仲間はチャボやネズミ、無毛症のキオミなど。みんなろくでなしの親やカラスに悩まされながらも気楽に生きている。そんな中、子供たちを子分として使う犬井と言う男が現れた。
 鉄夫も犬井にスカウトされる。年少の子供をまとめる幹部クラスの「兄犬」の地位を用意するとか。大雨の中、避難用のブロックを積み上げる様子を見ていると、確かに効率的に見える。だが鉄夫には何か気に入らない。やがて犬井の許から、「兄犬」の立場だったソンナムが逃げて来た。子供たちから搾取する犬井の話を聞いて、鉄夫たちは子供たちを解放しようと計画を立てる。だが本当に手強かったのは、つい最近「兄犬」の立場に立ったノラだった。

 煙の山
 ゴミの不法投棄を請け負う会社に勤め始めた小見山。投棄場所「ケブリ山」に着いてみると、そこには少年たちが住みついていた。数年前からここでゴミの山からお宝を探して暮らしていると言う。お近づきになったしるしにと貰ったオイルライターは、たまたま見せた古道具屋「昭和堂」の主人の目に止まってしまった。以来、昭和堂の主人は子供たちに資本主義を教え込んでもっとお宝探しをさせる、とケブリ山に文明の利器なる贅沢品を持ち込んで来る。

 千年も、万年も
 ノラはケブリ山を脱出することにした。ハチ公も着いてくる、と言う。小見山にトラックに乗せて貰って初めて見た外の世界は、勝ち組と負け組が連鎖する格差社会だった。カネに支配される大人たち相手に、持前の才覚でクモ相撲や競輪のノミ屋をして金儲けしていくノラ。駐輪場の二階で暮らしている老夫婦に世話になり、二人には恩返しをしたいと思いながらも、本当に喜ぶことが思いつかない。やがてノミ行為がばれて、地元のヤクザに目を付けられる。目の届く範囲の小さな世界で暮らしたい、と言う老夫婦にノラは、宝島へ行くことを勧める。…

 この作家さんもファンタジーノベル大賞出身。受賞作以降作品を出していないと勘違いしてました。間は空いてるけど出してらしたんですね。
 話としては面白いんですが、ゴミ捨て場で暮らす子供たちの姿がどうしてもいいものだとは思えず;; 掃除や片付けの苦手な私が言うのもなんですが、やっぱり衛生的にどうだろうとか、若いうちはいいけど病気になったらどうするんだとか、読み書き計算は出来た方がいいんじゃないかとか、余計なことが気になる。昭和堂に騙されこき使われる小見山の姿も、「これはひとがいいとか言うレベルじゃないだろ」と腹立って来ましたし。そんなにお宝ってほいほい見つかるものかしら、とも思ったなぁ。
 最終話でのホトトギスの句のエピソード、「鳴かぬなら」の後に続く言葉には「逃がしてしまえ」にしろ「私が鳴こう」にしろ、素直にほお、と思いました。お金を筋肉や時間に例えることも。
 同じ自給自足生活をするならゴミ捨て場より、廃村か何かへ行って農作業するとかした方がよくないかなぁ。それにしても元手がいるのかもしれませんが、そのくらいは「お宝探し」やクモ相撲で何とかするとして。廃品を漁るのも、彼らの言う自立ではなく、世界の大きな流れの一部になってる気がしますし。