読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

鴨川ホルモー 万城目学著 産業編集センター 2006年

 第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞作。

 このごろ都にはやるもの、勧誘、貧乏、一目ぼれ。
 葵祭の帰り道、ふと渡されたビラ一枚。
 腹を空かせた新入生、文句に誘われノコノコと、
 出向いた先で見たものは、世にも華麗な女でした。…

 そうして二浪の末京都大学に合格した「俺」安倍は、教育学部の新入生・早良京子に恋をした。彼女に会いたい一心で入ったのは「京大青竜会」と言うサークル。何をするところなのかわからないまま数々の例会や野外活動に参加し、でも早良京子とお近づきになることもできないまま、いよいよ7月16日祇園祭宵山青竜会の正体が明らかにされた。京都産業大学玄武組、立命館大学白虎隊、竜谷大学フェニックスと共に鬼を使役して勝敗を競う「ホルモー」なる競技を行うのだと言う。
 中途半端な気持ちのまま、先輩連中から鬼語やホルモーの教習を受ける新入生十人。吉田神社で台替わりの儀を行って鬼の存在を確認し、いよいよホルモーは始まった。
 思わぬ才能を発揮したのは法学部の芦屋。仕切り屋で厚かましくて器の小さい、しかし見た目は爽やかな、極めて同性受けの悪い男。獅子奮迅の働きで勝利にあと一歩にまで近付くが、経済学部の帰国子女・高村の采配ミスのために立命館白虎隊に惨敗してしまう。高村を責める芦屋、慰める安倍。だが最終的に引き籠ったのは安倍の方だった。早良京子が芦屋と付き合っていることを、高村から聞いてしまったので。さらに追い打ちをかける早良京子の訪問、芦屋の襲撃。安倍は〈ホルモー覚書〉第十七条を発議、京大青竜会を二分割することに成功するが、安倍に賛同した者は皆この世ならざるものがオニに襲われ、悲鳴を上げて消え去って行く風景を毎晩見ることになる。
 この苦境から解放されるには、ホルモーに勝つしかない。だが、勇猛果敢な芦屋の使役に誰が勝てるのか。軍師はいた。安倍側に付いた女性・楠木ふみが、諸葛孔明さながらに見事な用兵を見せた。
 最終決戦、因縁の相手は芦屋率いる京大青竜会神撰組。大事な一戦前に、楠木ふみはメガネを割ってしまったと言う。安倍は芦屋に、いや楠木は安倍に勝てるのか。…

 ああ、なるほど、ファイアーエンブレム、もしくはピグミン(←いや、きっと違う)。
 話題の作品、漸く読めました。いや~、軽い。するする楽しく読めました。この重みがない所がきっとファンタジーノベル大賞と違う所なんだろうな、と勝手に思いつつ。田中芳樹に馴染んだ身としては、もうちょっと試合内容とか采配ぶりとかを見たかったかも。
 異性にもてるから同性に嫌われるのか、芦屋に対する安倍はじめとする男性軍の敵意には苦笑。でもそれは女性陣も思ってたりするんですよ、あの男はなんであんな女の子選ぶんだろう、見る目ないねぇ、って。大学からの友人が「所詮男なんて、って思うニュースがあるんだけど」と前置きして某有名漫画家の結婚話を教えてくれた時には、やっぱり聞いてた一同脱力しましたもの(笑)。それにしても早良さんの行為は、相手の好意を知らなかったにしても酷いと思うけど。
 面白かったけど爆笑まで行かなかったのはどうしてかなぁ。「ほら、面白いでしょ、笑って?」って差し出されてる感じがするからかしら。
 例え誰も見てなくても、「ホルモォォォォーッ!」って叫ぶのはちょっと嫌かも。それとも却って気持ちいかな、何かを捨てられて(笑)。表紙に四人しかいないのが不思議でした。