読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

水の時計 初野晴著 角川書店 2002年

 第22回横溝正史ミステリ大賞受賞作。
 ネタばれになってる気がします、すみません;
 
 暴走族の内部分裂で、高村昴は高階稔に追われている。そんな昴に声をかけた男がいた。芥と名乗る男に連れて行かれた先は南丘聖隷病院。廃墟に見えたその病院には、チューブに繋がれ延命処置を受けている少女・葉月が一人横たわっていた。とある大金持ちの令嬢らしい彼女はもう二度と目覚めることはない。彼女は臓器移植のドナーとなることを望んでいたが、年齢制限や家族の了承の問題もあって合法的には提供できない。彼女の臓器を移植する相手を探し、選び、運ぶこと。それが昴に託されたことだった。
 母親に虐待され、失明した幼い女の子には角膜を。
 国外で腎臓移植の手術を受けようと騙された腎不全の女性には腎臓を。
 暴力団組織をバックボーンにした海外での臓器売買の斡旋業者、腎臓斡旋詐欺に加担したとみられる医薬品総合商社トーワ・コーポレーション、そこの営業ノルマが果たせず自殺未遂にまで精神的に追い込まれた社員・高村とその友人、フリーライターの笠原。少年課の刑事堀池は執拗に昴を追う。次第に昴の生い立ちが明らかになって行く。
 恩師でもある森尾哲朗に、最後の心臓を渡したいと願う昴。自らも心臓病を患い、長年連れ添った妻が行方不明になって途方に暮れる森尾は、だがそれを断る。昴は多数の臓器を失いながらもまだ生きている少女の元に向かう。…

 綾辻さんのエッセイ集の中で、絶賛されていた一冊。読んでみたいと思いつつ、同じく誉められていた小笠原慧著『DZ』が肌に合わなかったので(…;)、それっきりになってました。そしたら何だかあちこちで名前をお見かけするようになりまして、そうそう、読まないと、と漸く手に取りました。
 オスカー・ワイルドの『幸福の王子』を下敷きにしたミステリー。ぼろ泣きしていい内容の筈なんですけど、…この人の文章、あまり私と合わないかも;;
 元々人物名を覚えるのが不得手なせいでしょうね、伏線に本当に気が付かず、葉月の文字通りの献身の理由にもあまり納得できず; 昴が所属していた暴走族が壊滅していく有様ももう一つ伝わって来ず;; 最後の昴と葉月の会話ではさすがにじわっとは来ましたが、それでも今いち乗り切れませんでした。
 各話はそれぞれもっと短くてよかったんじゃないかな。その代り4つではなく譲った12の臓器全ての話にして、もっと細かく暴走族だの何だの、昴の背景の変化を描いて欲しかったかも。
 横溝正史賞、私には合わないのかな~。