読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

廃墟建築士 三崎亜記著 集英社 2009年

 短編4編収録。

 七階闘争
 七階で連続して事件が起きている。主婦殺人事件、中学生の飛び降り自殺、火災、老人の孤独死etc. 市議会は根本原因を断ち切るべく、七階の撤去を決定した。七階に住む森崎は市の職員から十階への移動を依頼される。同じく七階に住む取引先の会社に勤める並川さんは、七階護持闘争に参加すると言う。
   …『イルムーシャの七階』って何!? 『七階の刷り込み』って!?
   いや、引っかかるのはそこじゃないだろ、私(笑)。
   「臭い物にフタ」で果たしていいのか、原因を誤魔化しているだけなんじゃないか。
   相変わらず、何かを暗示しているようです。

 廃墟建築士
 関川は我が国における廃墟建築士の第一人者。クマリア学研都市近くの「スラッシュマスの連鎖廃墟」を見て以来、その魅力に取り付かれている。廃墟文化に対してお粗末な理解しか持たない我が国で、関川は義父にも当たる野口建設の社長と共に、高温多湿なこの国独自の廃墟文化を確立、後進の指導に当たる。やがて弟子の一人・鶴崎が国家的プロジェクト高層廃墟を建設するようになる。
   …自分の腕と仕事に誇りを持つ職人さんの話。職人さんは好きなんですが、廃墟建築士とは。
   癒し空間かぁ、でもやっぱり人を立ち退かせてまで造る物とは思えないなぁ。
   
 図書館
 地方都市の図書館で、ハヤカワ・トータルプランニングの日野原は夜間開館に挑むことになった。夜中、図書館は野生を取り戻し、本は羽ばたき回遊する。日野原が調教に成功する中で、館長は勝手に会期を延長してしまう。日野原の手を離れ、本たちは暴走しはじめた。
   …あら、日野原さん、お久しぶり。社長との間に何があるんでしょうか、これは今後もシリーズ化
   されるんでしょうか。
   それにしても夜間図書館、見てみたいかも。

 蔵守
 「蔵」と「蔵守」。蔵守はただひたすら蔵を守り続け、蔵は蔵守の存在を意識したことはない。蔵が自分の中に、自分とは違う異物の「存在」を感じたある日、蔵守は「蔵守見習い」の訪問を受ける。蔵も蔵守も反発しながらもやがて相手に働きかけ、心を通じ合わせる。やがて、蔵の中身を奪う「略奪者」がやって来た。…
    …最初は本当、訳分かんない話だったのですが、蔵が「飛ぶ」場面は妙に感動してしまいました。

 中で一番短い話が表題作。
 でも確かに、題名にするならこれだなぁ、どれより印象が強い。
 装丁もいいですね、裏の見返しに「設計 三崎亜記」「承認 関川」とかハンコが押してあるのが凝ってて嬉しい。
 今回は眉村卓さんを連想しませんでした。三崎さん独自の世界になってきた、ってことでしょうか。