読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

火村英生に捧げる犯罪 有栖川有栖著 文藝春秋 2008年

 社会人アリスのシリーズ、短編からショートショートまで8本収録。

 長い影
 廃業した工場で男の死体が見つかった。両手両足を縛られ口をガムテープで塞がれて、ドアノブに結んだ紐首を吊っていた状態。被害者・川又は16年前、金貸しの老女を殺した強盗殺人事件の容疑者だった。その時強盗仲間として疑われた今沢は事件後渡米、今は冷凍食品の輸入会社社長として成功を収めている。外国にいた今沢には時効はまだ成立していない。川又に恐喝されて口封じに殺したのではないか。だが向かいの家の住人が11時20分頃工場を出て行く不審な影を見ており、その時間川又にはアリバイがある。 

 鸚鵡返し
 殺人事件現場にいたオウムが「ハンニンハ、タカウラ」と繰り返し叫んでいる。死者のダイイング・メッセージなのか、だが容疑者はほかにもう一人いた。

 あるいは四風荘殺人事件
 推理小説界の重鎮・里中泰成が死んだ。遺品を整理していると、絶筆原稿が見つかった。だが未完。生前本格推理小説をくそみそに貶していたと言うのに、小説の舞台は雪密室、円形の庭に面して四方向に建てられた家の一つで起こった二つの殺人、不思議な足跡。アリスと火村に犯人を推理してくれ、と依頼が来る。

 殺意と善意の顛末
 マンションの901号室で殺された被害者。容疑者は、以前の住まいだった203号室には遊びに行ったことがあるが、901号室にはないと言う。だが901号室の襖には容疑者の指紋が見つかった。

 偽りのペア
 女子大生が刺殺された。部屋からは色違いのTシャツを着た男との2ショット写真が見つかっている。痴話喧嘩のもつれか、と相手の男を探すが見つからない。下宿の婆ちゃんの言葉から、火村はペアルックの別の可能性に気が付く。

 火村英生に捧げる犯罪
 アリスにかかって来たのは、盗作疑惑の話し合いをしようという胡散臭い電話。同じ頃30歳の女性エステティシャンの、首が落とされた死体が見つかった。大阪府警には火村英生に対するR教授からの挑戦状が届き、小学校の校庭には机が「5」のように並ぶ事件が起きる。火村は入試の監督で動けない、代わりにアリスが現場に向かう。女性の交際相手だった男の父親はかつて火村とやりあった敏腕弁護士。その男自身は犯行時間、友人と一緒にいたと言う。どの事件も関連しているのか。

 殺風景な部屋
 空室だらけのオフィスビルの一室で、男の刺殺死体が見つかった。圏外なのに携帯電話を握りしめ、這った跡があるのに仰向けになっている。現場を見ることなく、火村は被害者のダイイングメッセージを解く。

 雷雨の庭で
 自宅の庭、天使の像の傍でこの家の主人が死んでいた。雨合羽を着こみ、スパナを握り締めている。隣人の放送作家とは相性が悪く、女を連れ込んで監禁しているだの毒ガスを製造しているだの、勝手に妄想を膨らませて警察に通報までしていたらしい。当然容疑者として隣人が疑われたが、雨の降りしきっていた犯行時間は相方の女性脚本家とパソコンで打ち合わせをしていたとか。長い時間その場を離れたことはなかったと証言している。…

 短編って読み易くていいなぁ。
 助教授から準教授になって初の作品、どれもするする読めて面白かったです。この人の文章は本当、チャーミングだなぁ。アリバイ崩しとダイイングメッセージ、雪密室はか~な~り力技(笑)。まぁこれは小説の中での「お話」ですしね。でもこの結末で娘さんは納得したのか~。…私ならしないかもなぁ(苦笑;)。
 図書館で借りた本なのでカバーを外すことはできませんでしたが、栞のヒモと表紙の色がどちらもオレンジ色、お揃いでお洒落♪ 隠れた所で凝ってますね。