読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

二分間の冒険 岡田淳著 偕成社 1985年

 ネタばれになってます、すみません;

 体育館で拾ったとげぬきを保健室に届けに行く途中、六年生の悟は一匹の黒猫に話しかけられる。
 ダレカと名乗る猫の「見えないとげ」を抜いてやった悟は、「お礼にのぞみを一つかなえてやる」と言われ、「考える時間をくれ」と返事。途端に辺りの風景は一変、悟は見知らぬ森の中にいた。
 元の世界に戻るためには、ダレカを捕まえなければならない。ダレカはこの世界で一番確かなものに姿を変えていると言う。仕方なく悟は森の中を歩き始める。
 やがて悟は焚火を囲む子供たちと出会う。みんなクラスメイトだったが、誰も悟のことは知らない様子。リュウの館へ行く子供を決めていると言う。
 竜が「確かなもの」なのだろうか。何も分からないまま、やはりクラスメイトのかおりと共に「リュウの館」へ行くことになってしまう悟。詳しい事情を聞いて驚いた。二ヶ月に一度、竜のいけにえになるために村から男女一人ずつを出す決まりになっているのだとか。
 さらに二人は、館へ行く途中に会った老人から、その儀式の由来を聞く。そもそもはその国の王と王妃が竜とした取引が原因だった。魔法を持つ竜の謎かけに答えられず、若さを取られてしまった王たち。引き換えに竜は国の平安を約束し、さらに若さを得ようと国中の子供を二ヶ月に一度男女一人ずつ60人集めているらしい。
 岩から剣を引き抜いた二人に、老人はお前たちこそ竜を倒せる選ばれた者だと告げる。今引き抜いた剣こそ竜の固いうろこを貫ける剣だが、そのことは他の子供達には決して言うな、きっとその剣を奪われる。悟とかおりは自信を得て館へ向かう。
 次々に集まる子供たちは、お互いがお互いの様子を伺っている。自分達の順番を待つ必要はない、と悟とかおりは竜に立ち向かうが、剣はうろこに当たって折れてしまう。ショックを受ける二人に、偶然事情を知ることになった太郎と恵美が真実を話す。おそらくここに来た全員が、自分こそは選ばれた者だと言う説明を受けている、と。竜など誰も倒せない、と諦めている太郎に対し、悟は残りの子供たち全員に真実を告げることを選ぶ。竜の出すなぞに答えられればうろこは落ちる。みんなで力を合わせて竜と対峙しよう。
 悟とかおりの順番が来た。周囲を子供たちが取り囲む。力を合わせて竜のなぞに答え、さらになぞを出し、竜から「いってはならない言葉」を引き出そうとする。竜と王との古の約束が明らかになる。悟にとって一番確かなものとは何なのか。…
 
 ちょっと前、新聞で紹介されていた作品です。「妙に頭に残る題名だなぁ」と気になって読んでみました。
 …うわ~、面白かった! 個人的にすごい推奨作!
 ミステリの要素も含んでて、自分たちが「選ばれた者」だと言う優越感を逆手にとっての中盤でのどんでん返し(まぁこれは何となく察しはつくんですが)、さらに竜との対決の後に暴かれる真相。「若さ」を取られた後の記述とか、歴史を積み重ねていない老いの様子が結構残酷で、胸に痛い。
 竜に出すなぞ、出される謎は妙に哲学的で、私には全然分かりませんでした。昔からあるものっぽいんですが、それも面白かったし。竜の倒し方ちょっと無理があるかな、とか最初に出て来たとげぬきが最終的にはあまり決め手にはならなかったかな、とかちょっと思いましたが、まぁそれはそれとして(笑)。
 挿絵いいなぁ。妙に古臭くて(ごめんなさい;)、『少年ケニア』を彷彿とさせるような挿画。これが内容を全然邪魔しない。今時のラノベっぽいイラストだったら却ってイメージを限定されたでしょうね。表紙の二人が二人とも左手で剣を持っているのはちょっと気になったけど(←細かい;)。