読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

笑うヤシュ・クック・モ 沢村凛著 双葉社 2008年

 ネタばれと言うか、粗筋ほとんど書いてます、出たばかりの本で本当、すみません;

 大学の同窓会の帰り、ふざけて5人で予想したtoto券が大当たりしてしまった。
 10年ぶりに会った同窓生4人は、喜び勇んで6700万近くの当たり券を保管している山上大樹を訪ねる。大樹は海外出張中で不在だったものの、実家の両親はtoto券を渡してくれた。ところが記憶していた箇所とマークが違っている。「大樹が賞金を独り占めしようとしているのかもしれない」――友人同士の疑いの言葉に、戸樫皓雅は不快感を隠せない。丁度toto券を写した撮り切りカメラがあった筈、現像してみようとDPEに出したら、全く見知らぬ赤い服の女性の写真を渡された。どこかでこの女性のカメラとすり替わってしまったらしい。
 大金を前に、それぞれは人が変わったよう。お互いがお互いを疑い始める。
 コンビニを営む金谷栄司は、本当は本格的なアウトドア用品の店がやりたくて資金を欲している。同窓会の帰り、偶然ラブホテルから出て来た女連れの恩師・峠先生の姿を見て、カメラのシャッターを押していた。
 東海林利男は仕事は順調なものの、妻と離婚して娘にも自由に会えない状態。
 山上大樹は大学卒業後、また新たに別の大学に入り直し、アフリカの口承文学の研究をしている。フィールドワークの資金は欲しいだろう。toto券を預かる、と主張したのは彼だった。
 南雲昇平は一流企業に勤めていたが倒産失業、3年前からフリーターの身。
 戸樫皓雅は4年前、交通事故で両親と妹を一度に亡くし、そのまま会社を辞めて半分引き籠りのような生活をしている。
 時間のある昇平と皓雅が、写真の女性を探そうと写真の背景・日光に向かう。観光名所を巡るうち、彼女を覚えていた喫茶店のウェイトレスに出会う。彼女はマヤ文明土偶ヤシュ・クック・モを携帯の待ち受け画面にし、近く東京上野・国立博物館で行われるマヤ展に行くつもりだと話したらしい。
 国立博物館前で入場者を見張る皓雅。やがて受付の女の子と仲良くなり、マヤ文明愛好家の椿由紀彦を紹介して貰う。女性その人を知っている人物はいなかったものの、持っていたバッグが知る人ぞ知るブランドの限定品だったことが分かった。顧客名簿から彼女の住所を突き止め訪ねてみるが、そこにいたのは死体になった彼女の夫の姿だった。
 古い墳墓の周りを新しい墳墓で囲むマヤの神殿になぞらえ、徐々に彼女に近付いて行くことを楽しんでいた皓雅。だがこの事実で冷水を浴びせかけられる。写真の彼女にせめて自首を勧めたい、と友人たちの制止を振り切り、彼女の行方を捜す。
 捜索が当初の目的から外れて行く中、友人たちのそれぞれの思惑が明らかになって行く。…

 一年に一度沢村作品が読める生活。いいなぁ(うっとり)。と思いつつ予約入れたら、あれ、ファンタジーじゃなかったのね~。現代ものの推理小説でした。
 読み易かったです。次々進んでいく捜査はテンポよかった。死体が見つかった辺りでは、「えっ、こういうことが出てくる小説とは思わなかった!」と本気で驚きました。働いていない皓雅の後ろめたさってのはよく分かるなぁ、私もプータローの時があったので(苦笑;)。いい大人だし余計なことは言わない、って見守る友人連中もこっそり心配してて、漸く熱中できるものを見つけた皓雅の行動を邪魔しない。
 でも動機は弱い気がするな~。説得力どうだろう、とは思いましたが、まぁいいや。沢村さんの現代ものは、私には大体今一つなので(←こらこら;)。