読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ミミズクと夜の王 紅玉いづき著 メディアワークス電撃文庫 2007年

 第13回電撃小説大賞<大賞>受賞作。
 ネタばれになるかも、すみません;

 自分をミミズクと名付けた少女は魔物のはびこる夜の森を訪れる。出会ったのは月の瞳、黒い翼を持つ魔物の王。王に彼女は願う、「あたしのこと、食べてくれませんかぁ?」
 盗賊の村で奴隷として育ったミミズク。額に「332」の焼印を持ち、両手両足を鎖で繋がれ、村人達に「ミミズ」と呼ばれ蔑まれ、死人を解体して処理していた少女。別の盗賊団に村を襲われた際、相手を刺して森へ逃げて来た。
 人の体の中を散々見て来た彼女の望みは、「跡形もなく消え去ること」。何も残さず魔王に自分を食べてほしい、と願うが魔王は望みを叶えない。その様子を見て、魔物「クロ」は徐々にミミズクを魔王の傍へ近付けて行く。
 クロに導かれて入った魔王の館には、魔王の描いた絵があった。その美しさに素直に惹かれるミミズク。魔物には手に入れられない赤い色料を魔王に渡そうと、その原料、赤い花・煉花が群生する森の奥深くに分け入る。自分の体を傷つけて、その血を栄養として煉花に与え、枯らさぬように魔王の元まで運ぶ。途中、森に迷い込んだ人間に、魔物には毒である花粉を分け与えたことから、森の外には思わぬ噂が立つ。「森の奥に娘が一人、魔王に囚われているらしい」。…やがて、聖騎士アン・デュークが少女を救いにやって来る。
 館は炎に包まれた。数々の美しい絵は焼かれ、魔王は捕えられた。救われた少女は記憶を封じられ、聖騎士とその妻・聖剣の乙女オリエッタに引き取られる。初めて人並みの生活を送るミミズク。皆に愛され、塔の上に住む王子と言う友達を得る。生まれつき四肢が動かない王子に対し、王は魔王の魔力を吸い取って注ぎ込むことで手足を治そうとしていた。
 城の魔術師の力でミミズクの封印は綻び、苦痛と共にやがて全てを思い出す。夜の王を求めて泣くミミズク。彼女を思い遣りながら、聖騎士アン・デュークは王に逆らえない。満月の夜、魔力を吸い取られた魔王に止めを刺そうと聖剣を振りかざし、ミミズクは魔王の元に走る。…

 あちこちで話題の作品。表紙からし電撃文庫とは思えない作り、中に挿絵は無いし、有川浩さんの解説までついてますもんね。
 いや~、泣きました。ぼろぼろ号泣、とまではいかなかったんですが常時うるうる来ている状態でした。
 始めはミミズクの「足りない」様子に眉を顰め、「…読めるかな?」と思ったんですが、それ故の計算無しの一途さは胸に来ました。記憶を無くして代わりに愛情を貰い、段々に知性を得て、再び記憶が蘇ってやっと夜の王の優しさに気づき、自分が持っていた感情にも気付く。
 夜の王の生い立ちを明かし、二人の仲立ちをする魔物クロもいい。
 ライトノベルの欠点と言うか長所と言うか、ハッピーエンドが大前提なので結末は読めてしまうんですよね。だからどうしてもはらはらどきどきは少なくなってしまう。ラストが分からなかったら、きっともっと泣いてたなあ。
 ライトノベルの常で、この作品もシリーズ化されてしまうんでしょうか。これはこれで完結として欲しいなぁ。変に引き延ばして残念な結果になりませんように、切に願ってしまいます。…それともこんな感想も、作者見くびってることになるのかも。