読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

饗宴(シュンポシオン)――ソクラテス最後の事件  柳広司著  原書房  2001年

 古代ギリシャ都市国家アテナイを舞台に、ソクラテスが連続殺人事件の真相を見抜く推理小説

 悲劇作家アガトンの、コンクール受賞優勝祝いに招かれたソクラテスと親友クリトン。その場にいたのは主人のアガトン、喜劇作家で皮肉な物言いをするアリストパネス、アガトンと恋仲にあるアテナイきっての粋人パウサニアス、どんな病でも治せると言う怪しげな薬を調合する在留外国人の老医師エリュクシマコスと、彼に心酔して後を付いて回っている若い貴族ポロス、スパルタの風習にかぶれて女を蔑視している軍人カリクレス。
 宴席での話題はあちこちに飛び、色々な噂話に花が咲く。中でもカリクレスが語ったピュタゴラス教団は不死を目的とし、魔神ホムンクルスを産み出さんとアテナイ人には不可解な戒律を守っているとか。
 散々飲み食いした次の日、広場の衆人の中で大量の林檎を手にポロスが死ぬ。続いて異邦の青年の死体が、町の外れでばらばらに引きちぎられた状態で見つかる。傍らには青銅製の円盤と陶器のかけらが入った革袋、その陶器のかけらには読めないギリシャ文字が刻まれており、たまたまソクラテスが見つけて拾ったのだが、医師として呼び出されたエリュクシマコスはそれを捜していたらしい。
 さらに市内の空家でパウサニアスがばらばら死体になって、彼と秘密に逢瀬を重ねていた人妻クリテュラが首吊り死体となって発見される。
 ラケス将軍の娘でカリクレスの妻ミュリネは月に一度開かれる女だけの宴に参加して以来、めっきりやつれている。医師エリュクシマコスの撲殺死体が見つかった後、カリクレスの家が焼け、中からカリクレスとミュリネの死体が発見される。
 アリストパネスは真相を見抜いたとソクラテスたちを招いて演劇を披露するが、ソクラテスは別の真実に行きつく。都市国家アテナイ衆愚政治に捕われ混迷の時代を迎える中、ソクラテスが事件の幕を引く。…

 このごろあちこちで評判の柳広司さん。漸く二冊目に手を出しました。
 学生時代の倫理の授業を何とか思い出そうと苦心しつつ、でもまるで記憶は蘇らないまま最後まで行きついてしまいました。そうそう、ソクラテス死刑になったのよね。市民の決定に従う、とか言って毒杯あおったんじゃなかったっけ。
 多分私にこの時代の知識があったら、もっと楽しめたんだろうでしょうね。あの言葉をここで使ったか!みたいな。…前の作品でもそう言っていた気がしますが(苦笑;)。
 いや、それでも、お話は十分面白かったです。慣れないカタカナ名に「…これは誰だったっけ?」「前に出てきてたっけ?」を繰り返したりもしましたが、これは私の記憶力の衰えによるものですし(涙;;)、最後の方では何とかなりましたし。暗号、惨殺、見立て殺人(のようなもの)に女装(笑)。サービス満点でした(笑)。