読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

薄妃の恋~僕僕先生 仁木英之著 新潮社 2008年

 『僕僕先生』シリーズ第二弾。
 かつて、のんべんだらり毎日ぐうたら暮らしていた青年・王弁と、可愛い少女仙人・僕僕とが各地を旅する連作短編集。ネタばれあります、すみません;

 羊羹比賽 王弁、料理勝負に出る
 大亀の珠鼈に乗って、訪れたのは荊州江陵府。春の祭りの真っ最中、町も大勢の人で賑わっている。折しも荊州刺史の元、厨師募集のための料理大会が開かれるらしい。王弁たちと同じ宿に泊まった老師・程端とその弟子・陸桐が食材選びで諍っているのを聞いた夜、僕僕は王弁にも料理大会に出場するよう言い出す。僕僕と珠鼈の調達してきた巨大魚・鱘を目の前に、途方に暮れる王弁。師弟二人の仲裁まで僕僕に命じられる。師弟が使ったのは高価な羊肉か、美味な鶏肉か。

 陽児雷児 雷神の子、友を得る
 王弁、僕僕は潭州洞庭湖から遡って長沙へ。降りやまぬ雨の理由は、雷の子・砰が地上にできた友人・董虔に毎日会いに来るから。董虔を説得に来た王弁の目の前で、董虔は面縛の道士に連れ去られる。道士は董虔の心臓を贄に、雨を止ませようとしていた。

 飄飄薄妃 王弁、熱愛現場を目撃する
 長沙の東、醴陵へ。王弁は昼日中からいちゃつく若い男女を見かける。僕僕の見立てでは、男の方は死にかけているらしい。女が実は化け物で精を取られているのかとも思えたが、どうやら女は人間らしい。だが僕僕は、男を助けたければ別れるよう、女に言い渡す。

 健忘収支 王弁、女神の厠で妙薬を捜す
 南へ、南嶽衡山へ到着。薬種屋の跡継ぎが健忘症になって困っているらしい。何しろ一日前のことも覚えておらず、店は弟が仕切っている有様。兄嫁も密かに弟に想いを寄せるが、お堅い弟は兄を押しのけて家督を継ぐ気になれない。兄の病を治して欲しいと言われた僕僕は、「全ての記憶を消す薬」を差し出す。

 黒髪黒卵 僕僕、異界の剣を仇打ちに貸し出す
 衡州の中心都市、衡陽へ。様々な民族が出入りするこの町では、裏社会に通じる乱暴な実力者・黒卵に逆らえる者はいなかった。たまたま黒卵と苗族の青年との喧嘩を僕僕が仲裁したことから、黒卵を親の敵とする下っ端役人・王達が僕僕一行に声をかけて来る。僕僕が黒卵と相対した時の剣が欲しいと言う王達に、僕僕は交換条件として妻・鶉を差し出せと言い出す。何の抵抗もなく承諾する王達。僕僕は人ならぬ鶉の正体を見破っていた。王達は宴の席で黒卵を仇討することを計画する。

 奪心之歌 僕僕、歌姫にはまる
 永州を越えたあたりで体調を崩した王弁に、鼈料理を作ってやろう、と僕僕が言ってくれたのはいいものの、宿を出たきり帰って来ない。捜しに行ってみると、街角で歌う歌姫・韓娥の声に聞き惚れている様子。だが、ある日を境に韓娥の姿が消える。どうやら刺吏が韓娥を屋敷に閉じ込めているらしい。その頃、五嶽の女神・魏夫人は可愛がっていた杜鵑が面縛の道士に連れ去られてしまった、と酒を飲んでぐれていた。…

 う~ん、『狼と香辛料』のホロとロレンスのいちゃいちゃは許せないのに、どうして僕僕先生と王弁のいちゃいちゃは微笑ましいんだろう。思わずにやにやしてしまいます。王弁、僕僕の掌の上で転がされてるなぁ(笑)。
 もともとの一作目が、やっぱり連作短編を集めたような内容でしたものね、違和感なく入れました。相変わらずふわふわと綴られるエピソード。するすると読めました。
 薄妃と言う新しい旅の仲間も増えるし、面縛の道士もまた後々出てくるのかな。ハッピーエンドだよね~、って予想はついちゃうんだけど、楽しかったです。
 挿絵も可愛くていいなぁ。できれば僕僕一行が旅した地図も入れてくれると嬉しいんだけど。