読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

聖なる島々へ ダイアナ・ウィン・ジョーンズ著/田村美佐子訳 創元推理文庫 2004年

 英国での出版は1977年。
 〈デイルマーク王国史〉第2巻。

 藁でできたかかし「アメットさん」と果物でできたかかし「リビー・ビア」を海に放り込んで幸運を祈る海祭りの日に生まれたミットは、小作農の子供。貧しくても笑いの絶えない両親の元で育っていたが、領主ハッド伯爵の課す年々重くなっていく税金に、とうとう土地を追われ港町ホーランドに移り住む。父親アルハミットは、伯爵を倒し蜂起しようと計画する組織〈ホーランドの自由の民〉の一員となり活動するが、ハッドの次男ハーチャドに捕まって行方不明になってしまう。ミットと母親ミルダはそのまま無事だったが、その日からミットは、伯爵と、父親を密告したと思われる仲間シリオールたちへの復讐を誓う。父親の代わりに漁に出て魚を売り、使い走りをして日銭を稼ぐ毎日。だが経済観念のないミルダは入った端から使い込んでしまう性格。伯爵の命を狙おうにも軍資金も貯まらない状況で、やがて二人は鉄砲鍛冶・ホービンと出会う。ミルダとホービンは結婚しちゃんとした生活を手に入れるが、ミットはまるで気に入らない。ホービンの仕事を手伝う振りをして火薬をくすね、海祭りの日に伯爵を爆死させる計画を立てる。だがあと一歩の所で、伯爵の三男ネイヴィスに邪魔される。
 兵隊たちに追われるミット。伯爵自身は海の上から、別の誰かに撃たれて殺されたらしい。ぼろぼろになったミットが逃げ込んだのは、小さな帆船〈風の道号〉だった。
 ハッド伯爵の孫娘9歳のヒルディは、祖父が死んだどさくさで自分の政略結婚が反故になることを期待していた。だがそうはいかないと言われ、腹立ち紛れに弟イネンと帆船〈風の道号〉に乗り込む。
 ちょっと遠出するだけのつもりだったのに、先客ミットに脅され、とんでもない旅になってしまった二人。潮に流されたり秋嵐に巻き込まれたり幸運のかかし「アメットさん」を拾ったり、ミットとも散々喧嘩するが、お互いに自分たちの過ちに気が付いていく。やがて、遭難していた男アルを助けたことから、〈風の道号〉は否応なく北部と南部デイルマークの真ん中に位置する〈聖なる島々〉、ヒルディの婚約者の元に向かうことになる。
 〈聖なる島々〉で三人はホーランドの状況や、ハッドの息子たちの確執を知る。長男ハールに売り渡されるため、連れて行かれるイネン。島民の協力を得て逃げ出したヒルディは伝説の〈島を育てし女〉に、ミットは〈地を揺るがすかた〉に会い、不思議な力を授かる。…

 一巻とは同じ世界、同じ時代なんですが、ほとんど重ならない。前半でちらっと北部の伯爵の子供が捕まって縛り首になったとか南北をつないでいた道が崩れたとか、一巻のエピソードが見え隠れするだけ。ラストでばたばたと一気にカタがついたなぁ。
 登場人物が結構みんな嫌な奴で(笑)、どうも誰にも感情移入しづらかったです。アルの正体なんかもの凄く意地悪。でも架空の風習が伏線になって後々効いてくる構成はさすが。拾い上げられたアミットさんやリビー・ビアが船を導いてくれる場面は本当、目の前に浮かんでくるようでした。
 ラストの「デイルマーク用語集」がいいなぁ。しまった、一巻目の用語集は読み飛ばしてしまった、もっとしっかり読んでおけばよかった;