読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

狩人は都を駆ける 我孫子武丸著 文藝春秋 2007年

 京都を舞台に、犬猫病院の向かいに事務所を構えている、とある動物嫌いの探偵が出会った事件を描いた連作短編集。
 ネタばれあります、すみません;

『狩人は都を駆ける』
 向かいの犬猫病院の獣医・沢田の紹介で、探偵は藤井喜美子に会った。このかくしゃくとした老婦人、大物政治家の愛人とも隠し子とも噂のある人物からの依頼内容は、「誘拐されたペットを無事保護すること」。ペットの名は雷蔵、雄のドーベルマン・ピンシェル。身代金一千万円を持って受け渡し場所に行ってみると、そこに現れたのは数人の小学生だった。喜美子の孫の同級生である彼らは、子供らしい容赦の無さでバットを振りかざし探偵を叩きのめして、体育倉庫に閉じ込める。攫われて以来、何も食べていない雷蔵と共に、首周りにはペットフードを塗り付けて。

『野良猫嫌い』
 近所で猫を惨殺する事件が起きている、どうにかしてほしい、と金田美晴がやって来る。彼女自身猫を飼っており、不安でたまらないとのこと。殺された三匹の野良猫に餌付けしていたおばさん、それを嫌がる主婦、この間高所から落ちて死んだ猫も同じ犯人の仕業かもしれない。聞き込みを続けるうち、美晴がこの間までストーカー被害にあっていたことが分かる。

『狙われたヴィスコンティ
 脅迫状が届いた、と依頼人の女・安曇利恵子は言う。シーズー犬のヴィスコンティの、コンテスト出場を取り止めろと言う内容。依頼人の夫は、思い込みの激しい妻が自分で脅迫状を書いたのではないかと思っていたし、妻は自分が犬を可愛がっていることを面白く思っていない夫の仕業ではないかと疑っていた。ボディガードとして雇われたコンテスト当日、目を離した隙にヴィスコンティの毛皮にガムが着けられる。

『失踪』
 猫が失踪する事件が相次いでいるらしい。三味線の皮にするため捕まえられているのではないか、と言う依頼人・永澤ひろみ。白いワゴンの男が箱を持っていた、との目撃証言もある。探偵の馴染みの新聞記者も話に乗ってきた。

『黒い毛皮の女』
 夜中、黒猫を轢いてしまった。何とか命は取りとめ、飼い主探しに奔走する探偵。現場近くで聞き込みをするが、飼い主らしい人物は見つからない。そのうち、探偵の自宅や事務所が空き巣に荒らされた。犯人は何を捜していたのか、黒猫と関係はあるのか。…

 私立探偵って変な言葉だよね~、探偵って大概私立だよね、公立探偵っているのかしら。
 外猫の説明「自由に出入りさせて餌をあげてる猫」「それって……野良猫に餌付けしてるのとどう違うんですか」には笑ってしまいました。その上で出した結論が「どうやら家まで平気で入ってくる野良猫のことらしい」。…いや、ちょっと何かが違う気がする(笑)。
 我孫子さん自身猫飼ってらっしゃいましたよね。なのに動物に対して妙に描写がシビア。まぁ語り手が「動物嫌い」ですからね。
 『狙われたヴィスコンティ』は推理小説としてはどうだろう、とちらっと思いましたが、あとはきちんと落ちがついてて面白かった。どれもこれも、結局一番怖いのは人間でした。…結構ブラックだったなぁ。
 表紙がいしかわじゅん氏でちょっとびっくり。こう言うタッチの絵は見たことありませんでした。